ハイタッチ新設などで1.3倍に
――「3Dセキュリティ」とは?
藤岡 脅威に対応するシステムを導入するに当たってはさまざまな角度からの検討が必要になります。新しい「箱」を増やすのか、ゲートウェイを機能拡張して次世代FWにするのか……。当社は機能拡張を行う製品を提供しています。システムを拡張するときに、考えるべき観点が四つあります。
一つは、ネットワークを利用する際のリスクの把握、二つ目は社員はさまざまな仕事に従事しているので、ビジネス要件に適したセキュリティポリシーをつくらなければ業務が回らなくなってしまいます。三つ目はどの機能を誰に実施するか。そして四つ目は「自分の起こしたアクションが会社にどんな影響を及ぼすのか」ということで、PCを使う社員にリスク教育をしなければなりません。一方で業務の生産性は落とすわけにはいかない。これらを踏まえて、当社のソリューションは「3Dセキュリティ」というコンセプトのもと、製品を開発しています。三つの観点から保護を強化する仕組みで、簡単に実行できる「Enforcement」、業務にもとづきセキュリティを適用するルールを作る「Policy」、そして、ユーザーを教育しながらポリシーを定着させ、意識向上につなげる「People」。この三つです。
先般、この設計思想をベースにして「Application Control」「DLP」「Identity Awareness」「Mobile Access」の四つの機能を搭載したセキュリティスイート「R75」の提供を開始しました。
――3Dセキュリティを推進するに当たって、社内体制で強化した点は?
藤岡 7月1日付で、顧客ごとにコンサルティング的な支援をするハイタッチ部隊を新設しました。重要な顧客、当社のゲートウェイを幅広く導入していただいている顧客に対して製品の利点を説明し、プロジェクトになった段階でパートナーと協働します。ユーザーが実現したいことを汲んで、交通整理するお手伝いをするのがハイタッチです。「3Dセキュリティ」は業種を特化していませんが、産業別に担当を割り当てて、通信、金融、公共系、製造、流通サービス、データセンター、ISPなどのサービサーを柱に事業を伸ばしていきます。
――今年度の目標は?
藤岡 昨年度(2010年12月期)の売上高を1とすると、2011年度は1.3倍に伸ばそうと考えています。今年度も残り半年なので、新しいセキュリティソリューションを付加して、3年後(2014年末)が終わった時点で3倍にするのが目標です。
――直近の成長の柱は「R75」ですか。
藤岡 ユーザー企業が新しいソリューションを検討して入れ替えるステップというのは、大きな商機になります。これまで大企業向けのお話をしてきましたが、中堅・中小企業、SOHOに対する販売にも力を入れます。アプライアンス単体の販売だけでなく、パートナーと組んで、大企業のセキュリティレベルを簡易に低価格で実現できるサービスを、クラウドで提供します。もう一つ、BCP(事業継続計画)に力を入れます。
当社は仮想化ソリューション「Abra」をもっています。USBメモリを自宅のPCに差し込むと、自動的に会社の画面に切り替わるというものです。震災以降、ディザスタリカバリや、在宅勤務、節電などさまざまな対応が必要とされていて、ディストリビュータが力を入れて販売しています。ビジネス的には大きな規模になると期待しています。
・お気に入りのビジネスツール 「hartmann(ハートマン)」のノートパッド。1877年創業の老舗がつくる製品で、持ちやすさ、触り心地がよく、何年経っても型崩れしない品質を誇る。先日、13年間愛用してきたものをなくしてしまい、取材日の2週間前に買った2代目。「これなしには生きていけない」ほどのお気に入り。
眼光紙背 ~取材を終えて~
CATechnologiesに12年間在籍した藤岡健氏。実は、この間に一度退職し、ほかの会社のカントリーマネージャーを務めていたという。藤岡氏が辞めた後、CAの日本法人の業績が落ち込んだことから、再び戻ってきてほしいとの要請に応えたという経緯がある。これまでCA日本法人を支えてきた屋台骨なら、再び辞める時に相当惜しまれたことと推察される。
外資系企業の人に取材すると、横文字を並べ立てられて、意味が取れなくなることがあるのだが、藤岡社長はゆっくりと明瞭な口調で、分かりやすく話してくれた。
チェック・ポイントは、もともとファイアウォールの会社だが、近年は「ピュアセキュリティ」のメーカーとして、よりセキュリティにフォーカスし、要件に合わせてセキュリティ・アプリケーションを選択・追加して集中管理できる「Software Blade」など、革新的な製品拡張を行っている。藤岡社長の号令の下、さらなるビジネス拡大に向けて再スタートを切った。(環)
プロフィール
(ふじおか つよし)日本IBM、旧日本モトローラで、長期にわたってマネジメント職に携わった後、日本ネクサウェブで代表取締役社長を務める。日本CA(CA Technologies)では、営業部門を統括する執行役員副社長を務めた。今年4月10日付でチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズの代表取締役社長に就任、現在に至る。
会社紹介
イスラエルのテルアビブにインターナショナル本社を置くセキュリティ企業で、1993年に設立。従業員数はグローバルで2200名。VPN/ファイアウォール製品の雄として日本国内でも大企業を中心にシェアをもつ。売上高は10億9790万ドル(2010年度実績)。日本法人は1997年に設立。