データセンター(DC)事業者のエクイニクスは、規模のメリットを最大限生かしてビジネスを伸ばしている。全世界で運営しているDCは、およそ100か所で、日本でも今年6月に3か所目の大型DCを開設。グローバルな視点で最適なDCを利用したいと考えるSIerやユーザー企業からの引き合いが数多く来ている。エクイニクス米本社のスティーブン・M・スミスCEO&プレジデントに話を聞いた。
“駅ナカ”方式で相乗効果を生む
――会社設立から13年目にして世界およそ100か所にデータセンター(DC)を展開していますが、何を狙ったものですか。
スミス DCにもいろいろなタイプがあります。当社はインフラに特化し、DCネットワークのハブを担うことを狙ってきました。この結果として、多くの顧客を集めることができ、さらにDCの数を増やすという好循環を生み出しています。
――ここでいうDCネットワークの“ハブ”とは、どういう意味ですか。
スミス ハブ空港や東京の新宿駅をイメージしてもらえば分かりやすい。異なる路線の飛行機や電車が数多く乗り入れることで、乗り換えを容易にし、より多くの人を集める構造になっていますね。人が集まれば、“駅ナカ”ビジネスのような新たな付加価値をつけていくことが可能になります。当社は、世界の要所要所にDCを設置し、さらにユーザーにより近いところにもDCを置いていく。通信ネットワークは、その土地ごとの最適なものを複数選択できるマルチ通信キャリア方式を貫いています。いくつかのハブ型DCを中心にネットワークを張り巡らせることで、空港や駅でいうところの集客力が飛躍的に高まるのです。
ユーザーからみれば、当社のDCにシステムを置くことで、世界の主要マーケットに効率よくITサービスを届けられる。こうした利点を評価していただき、これまでに4000社を超える顧客を獲得してきまきした。グローバルでITサービスを提供しているIBMやGoogleのような顧客も多数含まれています。世界の主要なネット活用型のサービスベンダーに当社DCへ入ってもらうことで、顧客同士の通信の高速化を実現し、これがさらに多くの顧客を呼び寄せるという構図です。
――IBMやGoogleなどの大手は、自前でDCや通信ネットワークを確保しているので、むしろ御社とは競合しませんか。
スミス 競合するどころか、協業ができるのです。今年13年目のまだ若い当社がここまで成長できたのは、IBMをはじめとする巨大なITベンダーと競合しないビジネスモデルを構築してきたからなのです。
そもそもSIerなど情報サービスベンダーは、ユーザーにSIや情報サービスを売りたいわけです。DCの設備投資をやりたいのではない。ならば、この設備部分については当社が担い、アプリケーションやサービスは彼らが担う。クラウドやPaaS、SaaSの潮流は当社の主たる関心事ではありませんし、当社DCでお預かりしている情報システムの運用サービスですら、限定的にしかやりません。この水平分業モデルに徹することで、パートナーシップを築きやすくしているのです。
Googleなどのネットサービス系については、大手の場合、自前でDC設備を運営している場合が多い。Googleもその一社ですが、一部、通信速度が必要なサービスなどで当社のDCネットワークを活用してもらうケースが増えています。およそ4000社もIT絡みの会社が当社のDCに集まっているわけですから、お互いのユーザー企業にお互いのサービスを、より速く、より効率のよい方法でデリバリーできるというわけです。小売業にたとえれば、自前で店舗も運営しているが、一方で“駅ナカ”にテナントとして出店することもある。顧客同士が相乗効果を生み出しているのです。
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