データセンター(DC)サービスのKVHは、グローバル通信ネットワーク網とクラウド対応DCの規模のメリットを生かしてビジネスを拡大している。2011年2月に竣工した首都圏の大型DCの受注は予想を上回る好調ぶりで、早々に第二期の拡張工事を決めた。震災後の事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)対策で、クラウド化が進む流れも追い風になっている。コンピューティングのインフラとネットワークに特化することで、業務アプリケーション領域に強いSIerとの相互補完を重視することで販路拡大を推進する。
印西DC、早々に完売の見込み
――千葉県印西市にある御社の大型データセンター(印西DC)が開設から10か月も経たないうちに満床になる見込みが立ったと聞きました。
ウォーリー おかげさまで、第一期施工分は遅くとも2012年6月までにほぼ完売する見込みが立ちました。印西DCはサーバーラック換算で約1600ラック相当の大型DCですが、手始めとして2011年2月に第一期工事として約400ラックを竣工しました。今回はこの部分が完売する見通しということです。予想を上回る速度で受注が決まっていることから、今は第二期施工に取りかかる準備を進めています。第一期工事のように400ラック規模で、もう1棟つくるか、あるいは2棟まとめてつくるかの検討も行っています。まとめてつくったほうが規模のメリットを生かせますからね。
――東日本大震災前の2月竣工とはいえ、震災後は首都圏に約7割のDCが集中している構造的なぜい弱さが問題視されています。また、立地的に放射線量が比較的高いホットスポット現象も懸念されませんか。
ウォーリー 震災については、何の罪もない多くの人々が被害を受け、さらには原発事故も重なり、心から遺憾に思いますし、残念でなりません。今、多くの方々が復興に向けて努力しておられ、われわれもまた困難を乗り越えてビジネスを継続していく強い意志をもっています。放射線量に関しては事故からすぐに測定器を複数輸入してモニタリングを行い、健康にまったく問題ない数値であることを確認済みです。これからも測定器を使ったモニタリングを続け、来訪する顧客や当社従業員の安全に最大限の配慮をしていきます。
首都圏へのDC集中についてですが、当社は首都圏3か所に加えて、事業継続計画(BCP)や災害復旧(DR)に対応した大阪DCを開設しています。万が一のときに顧客のBCP、DRをサポートできる体制が整っており、大阪DCをメインで使いたいという顧客にも対応できます。
遠隔地にバックアップ用のDCをもつことはDC事業者にとって必須であることはいうまでもありませんが、一方、現実ベースの話をさせていただければ、日本国内にDCを置く限り、地震からは逃れられません。だからこそ耐震・免震構造にして、タフな非常用電源の確保に努めているわけです。当社が運営するDCはすべて今考えられる最善の災害対策を施してあります。
――実際、御社の印西DCは顧客の好評を博しているので、戦略は間違っていなかったというわけですね。
ウォーリー エネルギー効率の観点からみれば、首都圏に比べて年間平均気温が低い北海道にDCを開設したほうがいいのでしょうけれど、DCの立地は大容量の通信ネットワーク回線に直結できることと、熟練のDC運営技術者を豊富に確保できること、DCを訪問したいという顧客が容易に足を運べることなど、さまざまな要素が絡み合います。当社のDC投資プランは、こうした諸条件を満たしたうえで最もバランスのよい選択であると自負しています。
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