パートナーと称する個人事業主2000人余りを組織するSIerの首都圏コンピュータ技術者。同社の業績が急回復している。市況の好転だけでなく、プログラマやSEとして高い技能を有するパートナーと営業部門との連携戦略が効果を発揮したのだ。首都圏だけでなく、九州や東北、北海道の国内ニアショア開発の需要もつかみつつある。リーマン・ショック以降の一時期は苦戦したが、今年度(2012年8月期)を最終年度とする3か年中期経営計画では「期初目標を達成できる見込み」(齋藤光仁社長)と、手応えは十分だ。
パートナーと社員の連携で成果
──大手ITベンダーやSIer、ユーザー企業の内製化指向の高まりで、一時期、非常に厳しいビジネス環境にあったとうかがっていますが、最近はいかがでしょうか。
齋藤 今年度(2012年8月期)は3か年中期経営計画の最終年度ですが、急速に盛り返しています。12年4月までの8か月で、すでに昨年度12か月分の営業利益の額を超えて推移していますし、実は昨年度(11年8月期)もほぼ計画値通りの業績でした。リーマン・ショックの傷跡がまだ色濃く残っていた中期計画初年度の10年8月期は、さすがに「どうしようか」と嘆くほど厳しい状況でしたが、後半の盛り返しで、中期経営計画はほぼ達成できそうです。
今期(12年8月期)取扱高はおよそ85億円に達する見込みで、先の営業利益と合わせて増収増益の見通しです。来年度(13年8月期)から始まる新しい3か年中期経営計画では、年間取扱高100億円の突破を視野に入れています。
──御社は2000人規模の個人事業主からなるユニークなSIerですが、彼らプログラマやSEが取り組むべきシステム開発業務は、今後、中長期的に縮小していくと危惧されています。どう対処しますか。
齋藤 かつてのような大規模ソフト開発案件が減ったり、あったとしても人件費の安い海外で開発したり、あるいは開発工程を最小限に抑えたクラウドサービスのような形態へと移行したりと、こうした動きが情報サービス業界において顕著になっているのは事実です。ただ、当社に所属しているパートナーは個人事業主で、いわば一人親方。腕一本で仕事をこなしてきた強者ばかりです。優秀でなければ生き残れない世界で、生き残ってきた。とはいえ、個人だと福利厚生や営業活動に限界がありますので、これらを当社が支援することで、これから先も一段と業績を伸ばせると考えています。
逆風下でも、業績を回復傾向にもってくることができたのは、もちろん大手ITベンダーやSIer、ユーザー企業のIT投資が改善していることも大きいのですが、それ以上に、パートナーと当社の営業との連携がうまく回ったことが挙げられます。私が首都圏コンピュータ技術者の経営に携わってから、ずっと取り組んできたのは、パートナーと営業の一体感の醸成です。営業社員に向けて、とにかく「パートナーの笑顔を何よりも優先してくれ」と何度もメッセージを出し、顧客先に出向いているパートナーからの情報を積極的に集めるなどして連携してきたことが、プラスに働きました。
──佐川急便の情報システム子会社のトップを務めておられた齋藤さんは、何がきっかけで首都圏コンピュータ技術者の経営に携わるようになったのですか。
齋藤 佐川コンピューター・システム(現SGシステム)の時代に、首都圏コンピュータ技術者のグループ会社である流通戦略総合研究所にお世話になったことがあって、このとき首都圏コンピュータ技術者を設立した横尾良明さんと知り合ったことがきっかけです。今は株式会社ですが、2007年までは協同組合で、横尾さんは協同組合の初代理事長で、およそ2000人という現在のパートナー数まで拡大する基礎をつくってきた人です。
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