グローバルSIerのトップグループ入りを目指すNTTデータの岩本敏男社長は、世界の主要市場を網羅する地域統括体制を強化するとともに、これらの組織を商材や技術で横串にした「Global One Team」をベースにビジネスを伸ばす。同社は今年から順次、アジア3地域、欧米2地域の計5地域本社体制へと移行。世界共通ブランドとして「One NTT DATA」を前面に打ち出すとともに、足下の国内市場の再創造「リ・マーケティング」を推進。2016年3月期までに世界トップグループ入りを実現させる考えだ。
国内で「リ・マーケティング」を推進
──情報サービス業で世界トップグループ入りを目指すNTTデータですが、まずは世界市場をどう捉えておられるのかをうかがいます。 岩本 世界の情報サービス市場はざっとみて70兆円で、そのうち国内が約10兆円という認識です。当社はここ数年、世界市場でまとまったシェアをとるべくM&A(企業の合併と買収)を推し進めており、2016年3月期までの中期経営計画では、この70兆円の市場でトップ5入りを目指しています。
──今、世界の情報サービス市場は、IBMやヒューレット・パッカード(HP)、富士通、アクセンチュアなどがトップグループを形成していますが、ここに食い込もうということですか。 岩本 そうです。ただ、残念ながら現状ではトップグループとのギャップがまだありますので、中期経営計画中にこの差を埋めていくことが、今年6月にトップに就いた私の使命です。
──具体的には、どのような施策を考えておられますか。 岩本 ポイントはグローバルビジネスの一段の拡大と、ソフトウェアやシステムの生産性の向上、国内市場の再創造を意味する「リ・マーケティング」にあります。NTTデータは世界市場ばかりみて、国内はそこそこと思われていたら、それは間違いですね。国内情報サービス市場は、あまり大きな伸びが期待できない成熟市場とはいえ、およそ10兆円あるわけで、GDPと同様、世界第3位の規模です。当社はここで約10%のシェアですが、やりようによっては売り上げ、利益ともにまだまだ伸びる余地がある。
業種でみると、公共と金融は、当社がもともと強い分野で、社会への貢献度も高い。国が「日本再生戦略」で決めた医療・介護、環境・エネルギー、農林水産業の重点3分野も、広い意味では公共であって、いわゆる「スマートコミュニティ」や「ビッグデータ」といった領域でビジネスを伸ばす余地があります。金融では、例えば地方銀行の共同利用型の基幹業務システムでは全国の約3割のシェアを獲得してトップシェアを握っていますし、信用金庫の共同利用型システムでもシェアを伸ばしています。
公共、金融ともに既存市場ではありますが、アプローチを変えることで、まだまだ市場をリ・マーケティングできると考えています。
制約は多いが中国は不可欠な市場
──グローバル市場ではどうでしょうか。 岩本 グローバルビジネスの大きなトピックスとして、今年から順次、地域別の統括会社体制へ移行したということがあります。アジアは日本と中国、アジア太平洋(APAC)の3軸体制、これに北米とEMEA(欧州・中東・アフリカ)の計5地域単位でビジネスを推進します。また、「NTT DATA」を世界共通ブランドにして、「One NTT DATA」を定着させていく考えです。世界のビジネスを東京・豊洲(NTTデータ本社)からすべてコントロールできるわけはありませんので、地域単位でグループ会社を統括する方式に改めました。
直近(2012年3月期)の海外売上高は約2083億円で、新たなM&A要素が入らなければ、今期(13年3月期)2200億円程度までは伸びる見込みです。国内市場のリ・マーケティングとあわせて、国内外ともにビジネスを伸ばしていきます。
──アジア最大市場となった中国でのビジネスでは難しい局面に差しかかっています。 岩本 私は、長年、金融システムに携わってきたこともあって、中国とは非常に深い縁があります。当社が中国ビジネスを始めた頃の話ですが、中国人民銀行や中国版郵便貯金のシステム構築を請け負った経緯もあり、中国へは延べ80回……、いや、オフショアソフト開発の案件も含めれば、100回を超えるほど頻繁に足を運びました。
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