テクマトリックスは、規模の小さな市場で大きなシェアを取るニッチトップ戦略で業績を伸ばしている。ネットワークやセキュリティ、医療、ネット通販、沖縄クラウドなどに絞り込んで、強みを重点的に伸ばす戦略で事業を拡大。直近の売り上げも過去最高を更新し続けており、由利孝社長は「もっている技術や業種・業務ノウハウを生かしてライバル他社と十分に差異化し、それを顧客から評価していただければ、必ず業績に結びつく」との信念をもって経営に当たっている。今年2月には東京証券取引所市場第二部から第一部に昇格した。
サービス領域により深く食い込む
──直近の売り上げ、利益ともに過去最高水準で推移するとともに、今年2月には東京証券取引所市場第二部から第一部に昇格を果たされました。強さの秘密はどのあたりにあるのでしょうか。 由利 売り上げは連結子会社の拡大効果もあって過去最高で推移していますが、利益はやっと2008年のリーマン・ショック以前の水準に近づきつつあるといった状況です。まだまだ十分とはいえませんが、ここまで成長できたポイントは、当社グループが行ってきた“ニッチトップ戦略”にあると考えています。
年商およそ160億円規模(2013年3月期予想ベース)の当社グループは、単純に体力の比較すれば超大手SIerに対抗する力はもっていません。しかし、特殊な立ち位置を保持しながら、大手を含むライバル他社と十分に差異化して、顧客から評価をいただければ、必ず業績に結びつく。参入障壁が高く、業種業務のノウハウで勝負できる特定分野を複数もち、伸ばしてきたことが当社の強みです。
──御社の定義でいうニッチトップの分野を教えてください。 由利 決算上の事業セグメントは「情報基盤事業」と「アプリケーション・サービス事業」の二つなのですが、この中身は多彩です。情報基盤事業では、負荷分散装置(ロードバランサ)、あるいは次世代ファイアウォールや個人認証、統合ログ管理アプライアンスなどのセキュリティに強みをもっています。ネットワークはコモディティ化による価格下落が起こりやすい分野なのですが、当社はネットワークでも上位レイヤに位置するロードバランサや、セキュリティの特定分野でノウハウを蓄積することで差異化に努めてきました。
利幅の薄い通信機器の販売や、縮小傾向にある手組みの受託ソフト開発ではダメで、専門知識を生かしたり、より深くサービス領域に食い込むような取り組みが、われわれSIerには求められているのです。
もう一つの事業セグメントのアプリケーション・サービス事業では、医療向けクラウドサービスやCRM(顧客情報管理)、組み込みソフトが伸びています。
医療分野では、医知悟(いちご)というグループ合同会社をもっていて、レントゲンなどで撮影した画像を、離れた場所でも読影できる仕組みづくりに取り組んでいます。出資者自らが経営に参加する合同会社方式にしたのは、この会社には読影や診断に関わる医師、技師の方々にも出資していただいているからです。当社はこうした遠隔読影の仕組みをクラウド方式で提供するだけでなく、医師や技師の方々が本当に使いやすいサービスにするにはどうしたらいいのかを追求することで差異化を進めています。
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