日立システムズとマレーシアのサンウェイテクノロジーの合弁会社日立サンウェイインフォメーションシステムズは、日立システムズグループのASEANにおける成長エンジンを担う。合弁会社ではマレーシアに加え、シンガポールとタイ、フィリピン、インドネシア、年内をめどにベトナムに拠点を新設する予定だ。日立システムズが保有するデータセンター(DC)を活用したITアウトソーシングやクラウドの技術と、サンウェイテクノロジーのASEANにおける拠点網やビジネスノウハウを組み合わせることで、向こう2年で売り上げを直近の3倍に伸ばす。
ASEAN全域をカバーできる相手を探す
──ASEANで一気に5拠点を構築し、年内にはベトナム拠点の開設を予定しておられるとのこと。まずは合弁相手のマレーシアのサンウェイテクノロジーとの出会いについて聞かせてください。 齋藤 私は、日立システムズの「海外売上高を10%へ高めろ」という指令の下、2011年4月に日立製作所から来ました。当時、すでに中国やタイでDCを活用した情報サービスが始まっていたり、準備が進んでいたりしていましたので、私はM&A(合併と買収)を早い段階で視野に入れることにしました。既存事業の延長線上には目指すべき数字はみえませんでしたので、これまでとは違ったことを新しくやっていかなければ目標に近づけない。そこで、まずはASEANで20社ほどの合弁やM&A(合併と買収)の相手となる会社をピックアップしたなかにサンウェイテクノロジーが含まれていたというわけです。
──なぜ、サンウェイテクノロジーという選択だったのですか。 齋藤 合弁にしても、M&Aにしても、お互いの強みを存分に生かすことが成功の秘訣です。日立システムズはDC活用型のアウトソーシングに強く、サンウェイはマレーシアを中心にASEANの複数の国に拠点を展開していて、製造業向けのPLM(プロダクト・ライフサイクル管理)や、プロダクトの設計や製造を担うCAD/CAM分野に強みをもっています。
日立システムズはASEANに足場がほしいと考え、サンウェイは日立システムズの総合的なDC活用型のITアウトソーシングの技術やノウハウを高く評価している。両者の強みをもち寄れば、ASEANでの情報サービスビジネスで競争優位性を発揮できる。そこで、結果的に日立システムズが51%、サンウェイ側が49%の出資比率で日立サンウェイインフォメーションシステムズの設立に至りました。
──ASEANに狙いを絞った理由は何ですか。 齋藤 私が日立システムズに着任した当時、中国では大連創盛科技や広東華智科技など優秀で信頼できるビジネスパートナーにすでに恵まれていたことや、介護・福祉のオリジナル業務パッケージを中国へ展開する販路開拓など、すでに着手されていたのですね。
ASEANでもタイで小規模ながらDC活用型サービスを手がけていましたが、ASEAN全域ということではまだほとんど手つかずでした。だからこそ、ASEAN全域をカバーする拠点や人材を抱えているビジネスパートナーを優先して探しました。具体的にはタイ、マレーシア、シンガポールは必須ですが、シンガポールはすでに発展しすぎている観がありますし、できればASEAN最大の人口を抱えるインドネシアもカバーできるパートナーとなると、サンウェイに絞られてきたということです。
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