ITホールディングス(ITHD)グループのクオリカは、中国/ASEANを中心とするアジアビジネスでグループをリードする存在だ。建機メーカーのコマツの情報システム子会社としてスタートした同社は、製造業向けのビジネスに強く、アジアに進出する製造業ユーザーのニーズをいち早くつかんだ。海外勤務の社員数はすでに全社員の10%近くに迫る勢いで増えており、今年4月にはシンガポール法人の体制を大幅に強化。この4月、トップに就いた加藤明氏は「海外ビジネスでリードし、グループの相乗効果を高めながらビジネスを伸ばす」と、アジアビジネスの強化に高い意欲を示す。
実は製造業にも強いITHDグループ
──御社はITホールディングス(ITHD)グループのグローバルビジネスの先鞭をつけた会社です。先代の西田光志・前社長は中国やASEANでの実績を大きく伸ばしてこられたわけですが、加藤社長はこれからどう舵取りをしていくおつもりですか。 加藤 当社の生い立ちはグローバルカンパニーのコマツ(小松製作所)の情報システム子会社としてスタートし、今でもコマツは当社のベストパートナーです。こうした経緯からして、コマツのグローバル進出をITの側面で支えるというミッションを遂行してきたことと、当社独自のグローバルビジネスを展開できたことが、グローバルビジネスを伸ばすうえで大きな原動力となりました。
グローバル展開中の主力商材は、鋳造品の製造シミュレーション「JSCAST」や生産管理システム「AToMsQube(アトムズキューブ)」、外食産業向け営業支援システム「TastyQube(テイスティキューブ)」などで、外食向けを除けば、やはり製造業向けのシステムが強い。この強みを伸ばしていくのが当面の方針です。
──日系ユーザー企業のうち、製造業の海外進出は他の業種より先んじていますから、この流れをうまくつかんだということですね。この4月から加藤さんがクオリカのトップを引き受けられることになった経緯を聞かせていただけますか。 加藤 私は、同じITHDグループに属するTISで製造業など産業分野のシステム構築(SI)を長く経験してきましたし、2007年からクオリカの社外取締役を務めていたこともあって、製造業ユーザー向けのビジネスはひと通り理解しているつもりです。こうしたことからクオリカのトップを引き受けることになりました。
あと、念のために一つつけ加えますと、TISはクレジットカードなどの金融分野の基幹業務システムに強いSIerという印象が先行しているのかもしれませんが、実は製造業など産業分野でもさまざまな実績があるんですよ。
──確かにITHDグループには、TISやクオリカ以外にも、生産管理に強いインテックやプロセス系製造業に強いAJSがありますね。 加藤 ITHDグループの売り上げ全体に占める製造業向け比率は直近で20%余りを占め、2013年3月期は前年度に比べて8.1%伸びています。そして、クオリカがITHDグループ入りしてからずっと力を入れてきたこととして、コマツ向け以外のビジネスを伸ばすことが挙げられます。グループに入った2000年当時の売り上げの多くはコマツ向けが占めていましたが、直近ではコマツ向けと一般顧客向けの比率は半々くらいまで拡大しています。コマツは当社に20%ほど出資していただいている株主でもあり、株主還元という側面でも、一般顧客向けのビジネス拡大は重要です。
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