ヴイエムウェアは、サーバーやデスクトップ、ネットワーク、ストレージなどのIT機能をハードウェアから切り離す取り組みを加速する。サーバー仮想化で急成長してきた同社だが、ここで積み上げた実績をあらゆるIT分野へと横展開していくことで成長の持続を図る。サーバーをハードウェアから切り離すことで運用が飛躍的に合理化されただけでなく、クラウドサービスの中核的技術として現代のITビジネスに欠かせない要素になった。今後は「ソフトウェア・デファインド(ソフトウェアによる定義)」を軸にデスクトップやデータセンター(DC)の仮想化によってITインフラの変革をリードする。
「サーバー仮想化」は序の口
──サーバー仮想化があたりまえのようになってきて、ある意味、需要が一巡した感があります。御社の成長可能性に限界がみえ始めているというようなことはありませんか。 三木 当社にとって「サーバー仮想化」は序の口に過ぎません。むしろ、ビジネスはこれからが本番と捉えています。2005年にVMware日本法人の経営トップ就任を引き受けたときから「サーバー仮想化だけではライバルに差をつけられない」と言い続けてきました。
かつて話したことがあると思いますが、当時の本丸は運用コストの削減にあって、サーバー仮想化は運用コスト削減の重要な手段の一つに過ぎません。日本の情報システムはとかく運用コストがかさみすぎていますからね。今、当社のサーバー向け製品は情報システムの運用コストを削減できるという点で、ユーザーから絶大な支持を得ているわけです。
──ということは、見方を変えれば、VMwareを使っての運用コスト削減はひと通り終わったということではないでしょうか。 三木 世の中の情報システムはサーバーだけで動いているわけではありません。クライアントとしてのパソコンがあり、ネットワークがあり、ストレージもあります。近年ではタブレットやスマートフォンなどのスマートデバイスが爆発的に普及しつつあります。その多くはいまだに仮想化されていません。つまり、運用に難があるものばかりなのです。サーバーのときもそうでしたが、ハードウェアとOSなどのソフトウェアが結合した状態で運用されていれば、運用効率がとても悪いことはすでに証明済み。すべての領域で、ハードウェアからソフトウェアの運用を切り離すことで大幅なコスト削減の余地が広がるわけです。
──サーバー側だけでなく、端末側も仮想化していくお考えですか。 三木 ソフトとハードが結合している限り、運用の効率は下がるばかりです。従来のサーバー/クライアント型はまさにその典型で、サーバーは箱に縛られ、クライアントはパソコンに閉じ込められていました。ハードから切り離すことで、サーバーは一つの箱にいくつもサーバーを入れて集積度を高めたり、デスクトップは世界中、どこにあるパソコンやスマートデバイスからでも自分のデスクトップを呼び出せたり、と自由自在です。
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