先を読んでビジョンを示し、大胆な決断をする。それがIBMの強さだろう。今もなおIT産業のリーダー企業であり続ける理由ともいえる。日本法人は、1年半前、外国人をトップに据え、経営体制を一新した。就任からこれまでの間、メディアに登場する機会があまり多くなかったマーティン・イェッター社長が、2013年末にインタビューに応じ、日本IBMの経営を語った。
四半期ベースで3期連続の成長
──2012年の5月から日本IBMのトップを務めておられますが、通期で指揮を執るのは13年度が初めて。どのような1年でしたか。 イェッター 2012年半ばから、私なりの変革を進めていました。13年度(13年12月期)の通期業績はまだ公表できませんが、13年度の第3四半期まででいえば、四半期ベースで3期連続の成長を果たしています。一定の成果を出すことができました。ただ、業績の質問を受けた時、私はいつもこう答えています。「喜んではいますが、満足はしていません」。
──イェッター社長が力を注いでこられた分野として、イメージしやすい施策に地方市場の開拓があります。イェッター社長がトップになる前の日本IBMは、地方市場に対するモチベーションが落ちていたように思いますが、その状態を見直して、再び地方に目を向け始められたとみています。 イェッター 私は日本IBMの社長に就いてからおよそ1年半、主に力を注ぐ分野を三つに絞ってきました。そのなかの一つに、地方での販売強化を盛り込みました。
日本を地域別に分析すると、ボリュームが大きいのは首都圏ですが、伸びしろという観点でみると、地方に大きなビジネスチャンスがあることがわかりました。だから、関西、中部、東北、北海道といった地方に新たな拠点を設置して、人員を手厚くしたのです。地方にはさまざまなニーズがあって、例えば、北九州市では(スマートシティ計画の一環で)、自治体や複数のITベンダーと協力して、エネルギー管理システムの構築をお手伝いしていますし、東北では食品の安全を守るための次世代トレーサビリティシステムの開発を支援しています。こうした地方独特の産業をサポートするビジネスには、引き続き力を入れていきます。
──三つのうち、残り二つの分野の進捗状況を教えてください。 イェッター 二つ目は成長領域のビジネス強化です。IBMは「Smarter Planet」という企業ビジョンのもとに活動していますが、それを支える重要なソリューションとして欠かせないのが、クラウド、ビッグデータアナリティクス、モバイル、スマートコマース/シティ、そしてセキュリティです。米本社はこれらのカテゴリを強化するために、企業買収を重ね、ポートフォリオを広げてきました。日本IBMもこれらを成長領域と位置づけて、関連する製品・サービスの販売強化に努めてきました。
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