米Evernoteは、NTTドコモ(ドコモ、加藤薫社長)と法人向けサービス「Evernote Business」の販売代理店契約を世界で初めて結んだ。コンシューマ向けのメモ/クラウドストレージアプリ「Evernote」を2008年にリリースし、スマートフォンやタブレット端末の普及とともに、ユーザーが急拡大。ユーザー数は全世界で1億人を超えた。B2Bの新ビジネスで、間接販売のチャネルを日本から構築した同社は、この顧客基盤を、これからのビジネスにどう生かしていくのか。フィル・リービンCEOに、Evernoteのいま、そして「100年後」を見据えた経営ビジョンを聞いた。
ドコモが世界初の法人向けチャネルに
──「Evernote Business」の間接販売チャネルをこのタイミングで構築し、パートナーの第一号にドコモを選んだ理由は、ずばり何でしょうか。 リービン 「Evernote Business」は全世界で1万2000社以上に導入されていますが、これまでは、Evernoteが直販してきて、しかも売り上げの80%は当社の営業さえも通さず、お客様自身がインターネット経由で直接契約して使っているものでした。しかし、当初、SMB(中堅・中小企業)向けのサービスとして提供を始めた「Evernote Business」は、大企業のなかの1000人くらいの部署に導入されるなど、ユースケースも多種多様になってきました。そうした事情を踏まえて、よりよいサービス、サポートを提供するためには、販売代理店を通した提供方法が必要だと考えたのです。
ドコモは、強力な法人営業のチャネルをおもちですし、当社とは過去5年ほど、コンシューマ向けサービスで理想的なパートナーシップを築いてきました。当社のこれまでの歴史を振り返っても、まず日本で新たな取り組みを始めて、世界に広げていくというパターンが多かったのですが、ドコモとの協業は、まさにそういう性質のものでした。ですから、ドコモが「Evernote Business」の世界初の代理店になったというのは、非常に大きなエポックですが、自然なことでもあったのです。
──販売代理店経由の提供を日本から始める理由は、日本の法人向けITビジネスが間接販売中心の市場だからですか? リービン 日本市場の状況は理解していますが、今回の契約は日本特有の動きということではありません。こうした売り方は世界中で必要になると思っていて、ドコモとの協業は、日本のお客様との接点を増やすだけでなく、「Evernote Business」の販売代理店モデルを世界中に展開していくための礎になると考えています。
──日本には、現在、どれくらいの「Evernote Business」ユーザーがいるのでしょうか。また、ドコモとの協業による拡販効果は? リービン これは本邦初公開ですが(笑)、約1000社が導入しています。順調なスタートだとはいえますが、拡大できる余地は大きいです。
ただ、ドコモとの販売代理店契約によって、ユーザー数や売り上げが50%増えるのか、はたまた5万%増えるのか、それはいまの段階では予想しにくいですね。志としては、あらゆるモダンなナレッジワーカーに、生産性向上のためのツールとして使ってほしいとは思っていますが……。
また、ドコモとの契約は、独占的なものではないので、日本の販売パートナーを今後拡充する可能性は当然あります。お客様にとっても、販路を選ぶことができるのは重要なことです。
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