弥生(岡本浩一郎社長)とマイクロソフト(樋口泰行社長)は、ITの導入・利活用が遅れている小規模法人・個人事業主の「自計化」促進に向けて協業する。弥生は、協業のなかで、マイクロソフトのクラウドサービス「Windows Azure」を開発基盤とした「弥生SaaS(仮称)」を2011年半ばに発売予定。2010年半ばには、一部顧客とパートナー向けにベータ版の提供を開始する計画だ。

 岡本社長は、09年6月の『週刊BCN』の取材に対して、「弥生会計」などの自社ソフトウェアのクラウド提供を「2010年末までに開始する」と明言していた。さらに、「Googleの『Google App Engine』と『Windows Azure』の両クラウド基盤で、まったく新しいアプリケーションによる新サービスを研究・検討中である」ことを明らかにしている。

 今回の両社の協業で、弥生はマイクロソフトのクラウド基盤を利用する具体策が示した。この先には、Google関連の事業計画が出てくる可能性もありそうだ。

 マイクロソフトとの協業では、弥生製品をマイクロソフト基盤に早期に対応する。09年12月発売の「弥生10シリーズ」では、Windows7、Windows Server 2008 R2、SQL Server 2008に対応済み。2010年前半から提供開始予定のMicrosoft Office 2010の関連製品群にも早期に対応していく。

 そのうえで、顧客に幅広い選択肢を提供するため、両社とPCメーカーを加えた3社が合同で業務ソフト活用セミナーを開催するほか、PCと弥生シリーズ、マイクロソフト製品を組み合わせた「特別パック」を用意し、拡販する計画だ。「特別パック」の販売は、家電量販店と両社が共同で展開し、量販店でのセミナーも行う予定だ。

 弥生によれば、国内企業約421万社のうち、87%にあたる約366万社が小規模・個人事業主。このうち約半数の会社が手書きで会計処理を行っている状況という。弥生は「弥生SaaS(仮称)」を含め、今後3年間で、このうちの10%にあたる36万社の獲得を目指す。現在の弥生シリーズの顧客76万社を加えると112万社となり、小規模・個人事業主の約3割が利用することになる。

 現在、弥生シリーズの販売実績の大半は量販店経由。ネットワーク版の拡販で、すでに販売パートナー網を築いてはいるが、SaaSの販売となると、簡単に販売網を築けるわけではない。ヒントになりそうなのが、マイクロソフトが掲げる「ソフトウェア+サービス(S+S)」だ。クラウドとオンプレミス(自社管理下にある設備に機材を設置)をシームレスに活用できる環境を提案できるということだ。

 小規模・個人事業主にどのようにSaaSが普及していくかは不透明だが、インターネットを介して購入する形態が定着すれば、既存の販売パートナーは行き場を失う。しかし、マイクロソフトの樋口社長が言うように、「弥生SaaS(仮称)では、データをオンプレミスで、アプリケーションをクラウドで活用する」という選択ができる。

 こうした利用形態の選択を顧客側で行うのは難しく、販売パートナーの導入支援が必要不可欠だ。ここで、SaaSとパートナーが共存できる。弥生は、当面の目標である36万社のうち2割を「弥生SaaS(仮称)」で提供することを念頭に置く。