京都大学VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー/施設長:松重和美 工学研究科教授)の「電気自動車プロジェクト」から生まれたベンチャー企業、グリーンロードモータース(小間裕康社長)は4月14日、会社設立を表明するととともに、製造から販売までを見据えた電気自動車事業に本格的に参入すると発表した。

記者会見で戦略を披露した小間裕康社長(左から2番目)

 京都周辺地域には電気自動車分野の部品・デバイス・材料・システム関連の多くの大・中小・ハイテクベンチャー企業群と、京都大学をはじめとする大学・公的研究機関が集積している。その地の利を活かして、京都大学VBL「電気自動車プロジェクト」は、地球環境改善にむけた具体的な取り組みとして、またグローバルなイノベーション創出の視点で、電気自動車開発に2008年から取り組んできた。

過去に開発した電気自動車の試作モデル

 その試みの成果として、今回の電気自動車に特化した企業の設立と、事業への本格参入を発表した。小間社長は、「ナノテク・材料・IT情報分野等の多様な最先端関連技術を導入し、伝統文化や特徴あるデザインとも融合し、まず都市型ユーズを優先して、実用車の早期普及を目指す」という。

 その実現のため、「これまでの一自動車企業やその系列では出来ない最高性能の構成部品の集積や、給電設備の社会インフラ整備をすすめ、国、自治体、関連企業、さらには海外の大学・政府、企業とも有機的に連携して、実用的な電気自動車の普及に取り組む」と説明している。

 グリーンロードモータースの電気自動車製造は、モジュール生産という新しい生産方式を考えている。それぞれの得意技術を持っているメーカーなどが担当する主要部品を、ある段階までユニット化して、生産ラインに送り込む生産方式である。

 部品メーカーは、場合によって生産ラインの一部を担うことにもなるので、コストや納期の大幅な圧縮が可能になるという。トヨタ自動車の「カンバン方式」の進化型として、この方式は第3の生産システムとして世界の大手自動車メーカーにも広まっているという。「iPod」と同様のファブレスモデルによる製造方式だ。すでに10社ほどの製造提携企業が固まっているという。

 「近い将来には電気自動車で取れる各種の走行情報を、IT技術でネットワーク化し分析していくことで、精度の高いルート検索や燃料消費の効率化、渋滞解消のメカニズムの解明なども可能になり、そこに新しいビジネスも生まれてくる」と小間代表は見ている。電気はクリーンなだけではなく、将来的に幅広い可能性を秘めている。IT技術との融合からまったく新しい価値が誕生するかもしれない。

 販売には、大手自動車メーカーでは考えられなかった家電量販店ルートやWebでの販売も視野に入れている。すでに手を上げている量販店もあるという。今秋にはコンセプトカーを発表し、2011年度には量産体制に入るという。

 環境志向、伝統文化、先端技術の融合を唱えてスタートした京都大学VBL「電気自動車プロジェクト」は、グリーンロードモータースの設立と本格的な事業参入で大きな展開を迎えた。自動車産業という重工業に、フットワークの良い軽量級の選手が知恵の結集で、独自の需要を創出し立ち入っていく図式のようにも見える。京都は千年の昔から最先端の町。電気自動車がその京都で新しく生まれ出ようとしているのは、不可避なのかもしれない。注目の企業が立ち上がった。当分目が離せない。(谷口一)

開発する電気自動車のイメージ