ウイングアークテクノロジーズ(内野弘幸社長)とブランドダイアログ(BD、稲葉雄一社長)は、1月11日、両社のテクノロジーを融合した新製品をリリースした。創業7年の2010年に株式上場を果たし、帳票ソフトウェアとBI(ビジネス・インテリジェンス)の国内市場でトップベンダーの地位を築いたウイングアークが、「グリッドコンピューティング」をビジネスモデルとして確立したベンチャーのBDに声をかけて始まった今回の協業は、単に両社の融合製品を世に出すことにとどまらない。両社の秘めた思惑を探った。

グリッドをビジネス化した唯一のISV

 新製品は、BDが提供するSaaS型営業支援SFA/顧客管理CRM「Knowlegde Suite」の主要機能である「営業支援GRIDY SFA」の標準機能として、ウイングアークが提供するデータ可視化や集計・分析機能をもつBI「Dr.Sum EA」を実装した中堅・中小企業(SMB)向けの「SaaS型 GRIDY BI powered by Dr.Sum EA(GRIDY BI)」だ。

両社社長は、堅く握手を交わし、今後の革新を約束した

 具体的には、ウイングアークのデータ可視化や集計・分析、情報共有機能をもつBIアプリケーション「Dr.Sum EA MotionBoard」を、BDの「GRIDY SFA」の集計・分析機能として採用した。「GRIDY SFA」に蓄積した顧客データや営業データなど、フロントオフィスデータを自由に、そして簡単にリアルタイム集計し、「Dr.Sum EA」がもつさまざまなビジュアル表現でデータを可視化できるのが特徴だ。

 BDが提供する「GRIDYグループウェア」は、導入無料、月額無料、ユーザー無制限で利用できるSaaS型アプリケーションとして、IT業界に革新を起こした。BDは、独自のCPUグリッド技術「プロモーショナルグリッド」によって、外部PCやサーバーのCPU/HDD資源を再活用し、仮想スーパーコンピュータを構築している。

 ユーザー企業は「GRIDYグループウェア」を無料で利用する代わりに、各クライアントPCに「GRIDYクライアント」をインストールし、「遊休資源」を貸し出す。これによって、無料での利用が実現しているのだ。この収益モデルは、「GRIDYグループウェア」のユーザーに有料の営業支援SFA/顧客管理CRM「Knowledge Suite」を使ってもらうことで、従量課金で売り上げる「フリーミアム方式」といえるビジネスモデルだ。

先に声をかけたのはウイングアーク

 2010年春先、ウイングアークの要請に応じて、両社の開発者を中心に協議を開始。両社の“得意技”を生かし、相互にメリットのある形を模索してきた。その第1弾となったのが、「GRIDY BI」である。実は、ウイングアークから声をかかった頃、BDはある悩みを抱えていた。稲葉社長は「既存の案件が競合する際、セールスフォース・ドットコムと当たるケースが増えていた。しかし当社には、製品内に溜まった膨大なデータを分析したり、可視化したりする機能がなかった。競合に打ち勝つうえで、新たな投資をして、自社開発でこの分析機能を開発するか、考えていた」という。

 そんな折、ウイングアークからアポイントの一報が届く。仕かけた側であるウイングアークの内野社長は、当時のことをこう述懐する。「グリッドコンピューティングの技術は、だいぶ以前から注目していた。しかし、これを具体的にビジネスモデル化したベンダーは見当たらなかった。そんな思いでいた時、当社の幹部からBDを紹介され、すぐに両社の“天才プログラマー”を引き合わせた」。ウイングアークのなかでは、「BDはグリッド技術を追求してきた。膨大なデータを高速処理できる可能性がある。当社のBIが、とんでもない速度で処理できるかもしれない」(内野社長)と、夢を抱いてのアライアンスだったといえる。

ウイングアークテクノロジーズの内野弘幸社長

 ウイングアークの内野社長もBDの稲葉社長も、どちらかというとビジネスモデルをつくる「プロモーター」だ。そこで、技術面からみて何ができるかを、両社の技術者同士で話し合わせた。「技術者たちはピンときたらしく、すぐに協業することで合意した」(内野社長)と、ほどなく具体的な協議が始まったという。結論からいうと、1~2回の技術者同士の会合で、BDの稲葉社長は「自社開発でBIを開発するのを止め、ウイングアークのDr.Sum EAを、有料版の当社製品のデフォルト機能にすることにした」という。

グリッドを使ってBIを超高速に

 BDは、協業で「有料版の普及につながり、ウイングアークと当社の開発力を合わせることで、新しい革新を起こすことができる」(稲葉社長)と、まずは収益拡大に期待する。今回の「GRIDY BI」の売上高は、両社でシェアする。だが、ウイングアークが期待するのは、この収益だけではない。

 内野社長は「当社のBIは、まだまだ中堅・中小企業に波及していない。協業で、当社のBIを使ってもらう機会が増える。また、必要に応じてカスタマイズや機能追加が必要になるだろうし、情報系システムだけでなく、基幹システムとのデータ連携や接続を考える顧客も増えるはずだ。その際、当社やパートナーが出向いて新規開発をできる案件が増える可能性がある」と、製品自体のレベニューシェアを得ることにとどまらず、副次的な収益拡大に狙いを定めているのだ。

 BDにとっても、ウイングアークの販売パートナーが「GRIDY BI」の開発で動くことで、「パートナー販売を拡大したい当社にとっては、システム・インテグレータ(SIer)などと出会うとてもいい機会になる」(稲葉社長)という。BDが提供するサービスは、現在、ほとんどの案件がインバウンドで舞い込んでくる。この見込み案件に対して、他のシステムと組み合わせて提案できる「売り手」を探しているという思惑と一致したというわけだ。

ブランドダイアログの稲葉雄一社長

 ところが、協業の本筋は、これだけではない。ここから先は、両社長が「開発・研究中」と、口を閉ざしているので想像の範疇だが、両社の“天才プログラマー”は、グリッド上でのSaaS利用や、そこに蓄積した膨大なデータをBIで分析する、という新しい仕組みのなかで、業界に革新を巻き起こそうとしているようだ。少なくとも、最近はやりのスマートフォン用の“何か”は、そのうちに出てきそうだ。(谷畑良胤)