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異色のゲーミフィケーション専門企業、アソビエの目指すもの

2012/08/22 10:50

 ゲーミフィケーションへの関心が高まりつつあるなかで、活用支援サービスを手がける企業が登場し始めた。「日本初のゲーミフィケーション専門会社」を謳うITベンチャー企業、アソビエもその一つ。人事評価や顧客管理、在庫管理などの業務システムで、ゲーミフィケーションの活用を支援するという。率いるのは、2012年7月、代表取締役CEOに就任した安部一真氏だ。

アソビエの安部一真代表取締役CEO

 ゲーミフィケーションとは、ゲームデザインの技術やメカニズムを他分野に応用する考え方だ。2011年頃から米国を中心に脚光を浴び始めた。ベンチャーキャピタル(VC)から多額の出資に成功したBudgevilleやBunchballのほか、Salesforce.comが買収したRyppleなどが話題のプレーヤーである。日本でも、先進事例を紹介する関連書籍が多数出版され、急速に関心が高まっている。ゆめみなど、活用支援サービスを手がける企業も登場している。

 アソビエは、2012年4月の設立。ゲーミフィケーションの活用を通じて、業務システム上の課題解決を目指している。安部CEOは、先行企業との違いを、「米国のBudgevilleやBunchballなどのサービスは、ウェブマーケティングの分野に偏っていて、顧客の心をどうつかむかに焦点を当てている。当社は、そうした領域にも関わるが、メインはエンタープライズの分野。社内の人材教育や業務管理などにゲーミフィケーションを活用したいと考えている」と説明する。

 具体的な事業は、ゲーミフィケーション導入セミナーや研修をはじめ、コンサルティングサービスの提供やウェブサービスの開発など。野球やゲーム『ドラゴンクエスト』、ディズニーなどの手近な事例を挙げながら、ゲーミフィケーションの9類型――「適切なガイド」「ダイレクトフィードバック」「状況の可視化」「ズルの管理」「デザイン」「協働」「競争」「難易度コントロール」「偉大なるゴール」――を説明してくれた。

 一番重要なのは、「偉大なるゴール」の設定だという。「まず問いかけたいのは、明確な目的をもって仕事をする従業員がどれだけいるのかということ。おそらく、ほとんどいない。会社の社訓や社是を、ふだん確認していないのだろう」。

 9類型をディズニーに当てはめると、「『偉大なるゴール』は、すべてのゲストにハピネスを提供すること。この一言を、毎日従業員(キャスト)が確認している。また、先輩のキャストが新人と仕事をしながらトレーニングしている。よい行いに対して上司がその場でほめる『ダイレクトフィードバック』がある。キャスト同士でも、よい行いに対して投票して発表する。ほめながら競争させている」。
 

ゲーミフィケーションの9類型――ディズニーの場合

 アソビエは、当面は中堅企業の人事・企画担当者などを対象とするセミナー・研修の開催で収益を上げていく。「ゲーミフィケーション関連のセミナーをみると、人間の欲求とはそもそも何かということを深掘りしていて、『では、明日からどうすればよいのか』と疑問に思うケースがある。当社は、『明日からこうしましょう』とアドバイスできるよう実践的にアプローチしていきたい。どのような課題を抱えていて、9類型のゲーミフィケーションをどのようなかたちで生かすのか。具体的な落としどころを、3時間くらいでご理解いただくセミナーにする」。セミナーなどで興味をもった企業に出向き、コンサルティングサービスを提供する考えだ。第1回のセミナーは、9月29日に開催するという。

 このほか、現在、ウェブサービスの開発にも着手している。ゲームの要素をふんだんに取り入れたウェブサービスを企画中だ。

 ただ、前例がほとんどない分野だけに、越えなければならないハードルは低くない。その一つが、顧客企業の管理職の理解だ。「社内業務を改善できるのは、中堅企業であれば40歳くらいの若い管理職。大手企業であればゲームネイティブといわれる年齢より、さらに上の人たちだ。この年齢の方々に、ゲーミフィケーションを理解してもらわなければならない。サービスを導入して、次の日から売り上げが向上するわけではないので、なかなか営業は難しい。最初の数か月は試行錯誤だろう。新しい概念のビジネスなので、しかたないかなと」。

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外部リンク

アソビエ=http://www.asobie.net/