「日本のサラリーマンの鬱屈した空気を打ち破る」

 安部CEOはこう語る。「今の日本には閉塞感がある。仕事イコールつまらない、けれどもやらなければならない、という意識を少しでも変えたい。サラリーマンが新しい発想を生んだり、つまらないものを少しでも変えたりして、楽しく働けるようにしたい」。

 安部CEOは、東京大学法学部を卒業後、経済産業省に入省。消費者保護政策やエネルギー政策、サービス産業の振興政策、電力の保安に関する政策立案に携わってきた。同省を退職後、「社会にイノベーションを起こすサムライの創出」を掲げた任意団体、サムライ・イノベーションを設立した後、アソビエのCEOに就任した異色の経歴をもつ。

 学生時代から、日本の経済を復活させたいという思いがあったという。「母子家庭で育ち、遺族年金で生活してきたことを高校生のときに知って、社会に恩返しをしないといけないと思った。今は、財政問題、少子高齢化、生産人口の減少という状況。経済を復活させて、活力のある国にしないと大変なことになる」。そう思ったものの、具体的な解はわからない。まずは官僚として挑戦しようと、5年間、エネルギー政策や消費者保護政策に関わった。「一官僚としてはなかなかいい仕事をしたという自負はあるが、限界も感じていた」。そして、ゲーミフィケーションで日本のサラリーマンの鬱屈した空気を打ち破り、日本に貢献するという思いを固めた。

 ゲーミフィケーションに狙いを定めたきっかけは、昨年、ゆめみの深田浩嗣社長の著作『ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足』を読んだことだった。「猛烈にゲームが好きで、壁にあたったときでも、『これが仮にゲームだったら非常におもしろい課題になる』という考え方をしていた。深田さんの本を読んでピンときた。原体験としてあったものを説明してくれていて、非常におもしろい概念だな、と」。

 ゲームビジネスは日本の得意分野だと考えていたが、ゲーミフィケーションという概念が米国で提唱され、関係する企業への出資も増えていている現状については、「単純に悔しいと感じた」という。「自分のバックグラウンドに加えて、日本にはゲームを受け入れやすい土壌があることをみて、これに賭けてみようと思った」。

田園調布に構えるオフィス。外観は住宅だ

 元官僚としての知見は、これからどのように生きてくるのか。「私がいたのは、ゲーミフィケーションから最も縁遠い組織だった。その意味では、ゲーミフィケーションを活用していない企業がどういう状況に置かれているのか、どういうところで稟議が止まるのか、どういうところで従業員のモチベーションが下がるのか……。肌感覚での知見がある。組織が硬直化している企業であれば、実質的な意志決定者が誰なのかがわかる。説得しなければならない役職の人たちにはなかなか会ってもらえないものだが、元官僚ということで話は聞いてもらえる。営業という意味では、まずは会ってもらうことが大事」と締めくくった。(信澤健太)

前へ

  • 1
  • 2