ソフトバンクの首席エヴァンジェリストとして年間300回以上、全国を講演して回っていた中山五輪男氏が、8月21日付で富士通に移籍した。富士通では、エバンジェリスト(正式な役職は「常務理事グローバルマーケティング部門首席エバンジェリスト」)として、得意分野であるAI(人工知能)を中心にクラウドサービスなど、同社が誇る先端デジタルテクノロジーと関係するソリューションを広める役と、後継者の育成、経営戦略の任を担う。「ソフトバンクを辞めるつもりはなかった」という同氏が、なぜ富士通移籍を決めたのか。その経緯や理由、入社後の役割について、同氏と同じ東京五輪の年に生まれた週刊BCN編集委員の谷畑良胤が聞いた。

ソフトバンクに骨を埋める予定が

 ――全国で年間300回以上の講演をこなす有名人ですので、今回に限らず、いままで転職の誘いは多くあったのではないですか。

中山 ソフトバンクで長くエバンジェリストを続ける中で、ヘッドハンティングを含め多くの(転職に関する)お誘いを受けました。ただ、年に何度も世界の有力企業を買収するなど、IT業界を含め飛ぶ鳥を落とす勢いのあるソフトバンクのエバンジェリストであることに誇りを感じていましたので、これまで、他社への転職を考えたことはありませんでした。
 
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ソフトバンクモバイルの宮内謙社長(当時)から
「iPhoneのエバンジェリストをやれ」と言われ、この道に入った
 
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 これまでに私が在籍した会社は、DEC(ディジタル・イクイップメント・コーポレーション=現ヒューレット・パッカード)、SGI、EMCを経て、2001年にブロードバンド回線「Yahoo! BB」が始まった時に入社したソフトバンクになります。正直、4社目となったソフトバンクで、骨を埋めるつもりでした。

 いまのエバンジェリスト活動は、08年に「iPhone」が日本に上陸した時、ソフトバンクモバイルの宮内謙社長(当時)から「中山くん、ソフトバンクモバイルに移籍して『iPhone』のエバンジェリストをやってくれ。全国のユーザーに『iPhone』を広めてくれ」と、(ソフトバンクコマースから)移籍したのが始まりです。それから9年、年間300回以上の講演を続けてきました。

 この間、エバンジェリストとして講演してきた内容は、時々のITの流行り廃りがありますので、最初iPhoneでしたが、それだけでなく、iPad、クラウド、ロボット(Pepperなど)、AI、IoT(Internet of Things)など、その時代の最先端のテクノロジーとサービスについて話をしてきました。今後も、ソフトバンクは幅広く、新しい領域に手を出していくでしょうから、この会社にいれば安泰ですし、面白いエバンジェリスト活動が続けられると思っていました。なので、転職は考えていませんでした。

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