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新型コロナ分析に寄与、米国エネルギー省がIBM POWER9搭載スパコン「Summit」投入

2020/03/12 17:15

 日本IBM(山口明夫社長)は、米国エネルギー省が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との戦いに世界最高性能のスパコンであるIBM POWER9搭載「Summit」を投入したことを発表した。


 現在、喫緊の対応が求められる問題の一つとして米国疾病予防管理センターの最新報告で、南極以外の全大陸の84カ国に拡大したと指摘されたCOVID-19が挙げられる。米国エネルギー省では、このCOVID-19との戦いに、強力な味方として新たにIBM製のスパコンSummitを投入した。

 ウイルスが細胞に感染する際には、細胞に結合して、「スパイク」と呼ばれる突起部分で自身の遺伝物質を宿主細胞に注入する。ウイルスのような新しい生体化合物を理解するには、研究室で微生物を培養し、それが新しい化合物の取り込みにどう反応するかを確認する。そのプロセスは、考えられる変数の範囲を絞り込むためのデジタル・シミュレーションを実行できるコンピューターがなければ効率よく進められない。しかし、こうしたコンピューターを利用できる場合でも課題がないわけではない。コンピューター・シミュレーションによって各変数がさまざまなウイルスとどのように反応するかを調べることはできるが、それらの変数がそれぞれ何百万あるいは何十億という一意のデータで構成され、さらに複数のシミュレーションを実行する必要性をともなう可能性がある場合、汎用ハードウェアでは極めて時間のかかるプロセスになってしまうという。

 そこで、研究者がSummitを利用したところ、わずか数日で8000種類もの化合物に対してシミュレーションを行うことが可能となった。ウイルスのスパイクと結合して、COVID-19の感染プロセスに影響をおよぼし得る化合物のモデルを作成することに成功し、COVID-19の宿主細胞に取り付いて感染する能力を弱める可能性のある薬剤や天然化合物など、77の低分子化合物を発見した。

 この研究の主席研究員であるジェレミー・スミス氏(テネシー大学の理事会議長、テネシー大学/オークリッジ国立研究所 分子生物物理学センター ディレクター)は、「われわれが必要とするシミュレーション結果を素早く得るには、Summitが必要不可欠だった。普通のコンピューターなら数カ月かかっていたところを、1~2日で終えることができた。まだCOVID-19の治療薬や治療法が見つかったわけではないが、今回発見された化合物は今後の研究に必要な情報をもたらし、さらに調査を進める実験者が利用するフレームワークとなることを大いに期待している。それによって、これらの化合物のいずれかがこのウイルスの抑制に必要な特徴を示しているかどうかがわかるだろう」と述べている。

 Summitが同研究チームに提供した大規模データ処理能力は、4608ノードのIBM Power Systems AC922サーバー(POWER9プロセッサー2個とNVIDIA Telsa V100 GPU 4個を搭載)によって実現した。Summitは、200ペタフロップスのピーク性能を発揮し、100万台のハイエンド・ノートPCが提供する性能を超えるよう設計されている。
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外部リンク

日本IBM=https://www.ibm.com/jp-ja