日本HPは7月から9月に全国7都市でパートナー向けのイベント「HP Partner Communication 2023」を開催した。リアルでの開催は4年ぶり。9月8日には仙台市のホテルで開かれ、中小企業も標的になっている最近のサイバー攻撃の現状について講演が行われたほか、セキュリティを強化した同社の製品の特徴についてパートナーに説明。販売を支援するパートナー向けの同社サイトをリニューアルし、より簡単に見積を作成できるようになったことなども紹介した。
4年ぶりに仙台市で開催された日本HPのパートナー向けイベント=同市内のホテル
冒頭で、同社パートナー営業統括の小林宗洋・執行役員があいさつ。サステナビリティへの取り組みが顧客からも求められているとして、顧客が現在使っているPCを買い取り、HP製品を購入してもらう新プログラムを紹介し、「買い替え需要時に一つの提案として組み込んでほしい」と述べた。小林執行役員は、2024年から約3年間は、wiodows11への買い替えやGIGAスクール構想向けの端末の置き換えなどでPCの需要が高まると説明。「全国約3500社のパートナーと協力し、買い替え需要を取っていきたい」と力を込めた。
日本HP
小林宗洋
執行役員
中小企業がサイバー攻撃の標的に
特別講演では、多摩大学ルール形成戦略研究所の西尾素己・客員教授が登壇。サイバー攻撃の最新動向を紹介し、企業が取るべき対策について話した。西尾教授は、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻について、「物理的な軍事攻撃に加え、サイバー空間での攻撃を組み合わせた、世界初の本格的なハイブリッド戦争だ」と指摘。米Microsoft(マイクロソフト)が公表したレポートのデータを引用し、「ロシア政府の諜報機関による、ウクライナの民間企業への攻撃が侵攻の発端で、サイバー攻撃を仕掛ける企業に侵攻の何年も前からマルウェアを忍び込ませていた可能性が高い」と述べた。西尾教授は「企業のIT担当者の日常業務は、ハイブリッド戦争の前哨戦ともいえる。セキュリティ性能が最適な製品を選定することは、社員や株主を守るために必要だ」と警鐘を鳴らした。
多摩大学
西尾素己・客員教授
また、被害が拡大し続けているランサムウェアについて、西尾教授は「米国の法規制強化の影響で大企業が身代金を支払わなくなっていることを受け、標的が中小企業に移っている」と指摘。ウクライナ侵攻の直後から、セキュリティが無防備な中小企業が狙われるケースが増え、サプライチェーンの中でも中小企業から感染させようとする傾向が高まっているとの状況を解説した。さらに、ランサムウェアの被害額年間10兆円が、ロシアの軍事費になっている可能性にも言及した。
サイバー攻撃の実態について、西尾教授は、フィッシングメールなどでマルウェアを侵入させなくても、ショートカットファイルやヘルプファイルなど、もともとPCの中にあるファイルを利用して攻撃する「LoTL(リビングオフザランド)」という手法が急激に増えていると指摘。「どんなものでも、いつマルウェアに化けるか分からない。ゼロトラストの時代になっている」(西尾教授)。企業が取れる対策として、▽安全なSaaSを選ぶ▽SaaSとエンドポイントをつなぐブラウザやアプリケーションの仮想化▽低レイヤー領域のセキュリティを強化している製品を選ぶ―の三点を挙げた。
製品のセキュリティ性能訴求で拡販へ
日本HPはセキュリティの取り組みと最新ソリューションについて、エンタープライズ営業統括営業企画部の大津山隆・プログラムマネージャーが解説した。同社は、製品アプローチとして「セキュアバイデザイン」の方針のもと、セキュリティを後付けするのではなく、設計段階から作りこんでいると説明。製品製造のサプライチェーン全体で、セキュリティ確保の取り組みに注力しているとした。
日本HP
大津山 隆
プログラムマネージャー
ハードウェアの初期化およびOSの起動を行うBIOSについて、大津山マネージャーは、自社で作っていることを説明。BIOSは脆弱性からの安全を担保するため、1~2カ月に一度程度アップデートが必要になっているが、自社製の場合はこの対応が迅速にできるとして「BIOSを自社で作っているPCベンダーは少なくなっている。HPはしっかりしたものづくりをしていることを販売の場面でも訴求してほしい」と述べた。
仮想化によるセキュリティ性能については、リスクのあるアプリケーションをPC内の仮想マシンに隔離し、生産性を下げずにセキュリティを担保できる「Sure Click」を紹介。大企業向けにカスタマイズできるテクノロジーから、パッケージされた製品まで幅広く展開しているとして「お客様の状況に合わせて提案が可能だ」(大津山マネージャー)とアピールした。
大津山マネージャーは「お客様は難しいことをしなくても、正しいセキュリティ性能の製品を買うことによってセキュリティを保つことができる。提案資料にうまくセキュリティの資料を入れて提案の付加価値を上げ、お客様満足度を高めていってほしい」と呼び掛けた。
サイトを一新し見積作成などを簡略化
同社はパートナー向けに提供しているサイト「HPパートナーナビ」を、4月にリニューアルした。今回のセミナーでは、製品番号をワンクリックで表示できるようにしたり、見積作成がより簡単になったりと、提案業務に関わる作業をサポートできるよう機能強化したことを報告。また、キャンペーン情報や在庫情報など、これまでパートナーにメールで個別に案内していた内容をサイト上で確認できるようにした。今後もパートナーからの意見を踏まえて、継続的にサイトの使い勝手を改善していくとした。
会場では、同社の法人向けPCの全製品が展示され、参加者がスタッフに性能などを質問する様子も見られた。
会場では法人向けPCの全製品を展示してパートナーに説明した