NTTアグリテクノロジーは12月15日、果物などの品質保持に関するコンサルティングサービスを開始した。NTT東日本、大阪大学との共同研究を事業化した。保存に最適な環境を実現し、収穫時期が短い農産品の価格安定や収益拡大に役立つとしている。JAや農業法人などをターゲットに販売する。
3者は、これまで生産者の経験や感覚に頼ってきた品質保持をデータで可視化し、最適な保存方法を確立する目的で共同研究を実施。見た目では判断できない農産品の「老化」を画像解析で判断したり、食品の水分子に電気エネルギーを与え続けて氷点下でも凍結しないようにしたりして、見た目や味を兼ね備えた状態で鮮度を保持できる技術を開発した。
果物だけでなく、肉や魚、花きなど100を超える品目に対応。料金は1品目あたり100万円程度。コンサルティングサービスに加え、温度センサーなど必要な設備を備えた業務用冷蔵庫(100~300万円)も提供する。既存の冷蔵設備をカスタマイズしてサービスを利用することも可能。
鮮度保持技術が搭載された冷蔵庫。
イチゴは2週間、食べごろを維持できる
2023年にイチゴとモモで半年間の実証実験を実施。イチゴの場合、通常の冷蔵庫では収穫後4日目から味と見た目の劣化がみられたが、開発した鮮度保持技術を搭載した冷蔵庫では、14日目でもおいしさが保たれたという。
NTTアグリテクノロジーの
秋田純・担当課長
サービス開始の背景について、NTTアグリテクノロジーの秋田純・デジタルファーミング推進部担当課長は「物流の人手不足により、地方の農産品を新鮮なうちに首都圏などの大消費地に運ぶことが難しくなる可能性が高い」と説明。品質を保持しながら出荷調整ができるようになると、農家の収益が安定化するほか、消費者にもロスなく農産品を届けらえるようになるといったメリットがあるとした。
同社は、長期保存による市場は3兆9000億円あるとみており、各地のJAや農業法人、自治体をターゲットとし、向こう10年で50億円の売り上げを目指す。秋田課長は「生産にかかわる人にコンサルサービスを提供し、お客さまと一緒に事業を成長させていきたい」と述べた。(堀 茜)