富士通は1月31日、2023年第3四半期(23年4~12月)の決算発表会のなかで、英国の郵便局で起きた冤罪事件に言及し、取締役執行役員SEVPの磯部武司・CFOは「厳粛に受け止め、郵便局長や家族、関係者に深くおわびする」と謝罪した。
磯部武司 CFO
磯部CFOは、「英国子会社が全面的に協力している英国の法廷調査では、長年に及ぶ複雑な事象について調査が進められており、今後も引き続き協力していく。調査への対応方針についても、本社取締役会が監督している。被害者にとって公正な結果が得られるよう早期の解決を望んでいる」とした上で、英政府関連の新規入札には期限を決めずに参加しないとも説明した。賠償については「調査の進捗を見極めながら検討する。来年度以降の業績影響は精査中で、まだ数値化できていない」と述べるにとどめた。
英国の郵便局冤罪事件は、富士通の子会社で英国事業を統括する富士通サービシーズが国有企業のポストオフィスに納入した会計システムに欠陥があり、窓口の現金がシステム上の残高より少なくなる問題が頻発。ポストオフィスが郵便局長らを訴追し、700人以上が罪に問われた。英国内では、対応が遅れた英政府と富士通サービシーズに批判が高まっており、被害者への賠償などが焦点となっている。
第3四半期の売上収益は1.7%増に
一方、第3四半期の決算については、売上高にあたる売上収益は前年同期比1.7%増の2兆6427億円とほぼ前年並みを維持したが、調整後営業利益は1188億円で前年比329億円の減益となった。主力のサービスソリューションは好調に推移。独におけるプライベートクラウド事業を1月末でカーブアウト、欧州のCCD(クライアントコンピューティングデバイス)事業から4月をめどに撤退することによる一過性の損失として、第3四半期の営業利益調整項目に約500億円を計上した。
また、4月1日付でサーバーやストレージなどの開発、製造、販売、保守を行うハードウェア専業会社として新会社エフサステクノロジーズを発足することについては、グループ内に散在していたハードウェアに関する機能を集約し、ワンストップ体制を構築するのが狙いと説明。磯部CFOは、事業の再編により、経営判断の迅速化と、徹底した事業効率を追求し、先端テクノロジーをもとに、高付加価値なトータルソリューションを提供できるようになるとし、「従来のような営業部門が売って、サポート部門が保守をするというバラバラの体制ではなく、ワンストップで価値を提供し、より良いものを素早く提供できる体制を整える」と述べた。
(堀 茜)