アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン（AWSジャパン）は11月13日、SaaSの開発や拡販を目指す企業向けの支援策「AWS SaaS支援プログラム」を開始した。パッケージソフトウェアのSaaS化、SaaS製品の競争力強化、販売支援の三つの段階でフェーズを切り分け、技術面、ビジネス面の双方で企業をサポートすることで、SaaS市場の活性化とクラウド利用促進を図る。
（堀 茜）

　支援プログラムは、▽Migrate to AWS（SaaSをはじめる）▽Innovate with AWS（競争力のあるSaaSをつくる）▽Scale with AWS（SaaSビジネスを拡大する）―の三つのフェーズで構成する。支援対象は、ISVや新たにSaaS外販を開始するエンタープライズ企業などを想定している。プログラムは原則無償で提供し、「Amazon Web Services（AWS）」の利用についても経済的負担を軽減するクレジット提供などを行い、SaaSの企画・移行から設計・構築、改善・強化、販売促進・海外進出と、広範囲な支援を行っていく。

　AWSジャパンは、オンプレミス向けのパッケージソフトを提供している会社の中には、SaaSやクラウドに関する知識不足で、SaaSビジネスに進出していない企業が多いとみており、こうした企業向けにSaaS化を支援する。エグゼクティブ向けセミナーの実施、AWSへの移行支援、各種クレジットプログラムの提供などを行う。

　SaaSの競争力向上を模索する企業に対しては、モダナイゼーション、アジャイル開発力強化、生成AI活用などを支援するほか、ビジネスと技術の個別課題に合わせた各種支援を実施。販売支援策は、ISVやSIerらが自社開発したプロダクトを販売できる「AWS Marketplace」への出品を促すとした。AWS Marketplaceは、原則として販売価格はドル建てだが、プライベートオファリングの利用で日本円での取引が可能になり、国内企業の活用が進んでいることも紹介した。

　SaaSの海外展開を目指す企業向けには、「AWS Global Passport」を適用。専門コンサル企業による戦略的評価や、グローバルのネットワークを活用した販売支援を行う。海外展開支援は、試験的に9社が活用。今後さらに希望する企業を募る。
 
　記者会見した常務執行役員の佐藤有紀子・デジタルサービス事業統括本部長は、支援プログラム開始の背景について、「国内でSaaS市場が拡大している一方で、グローバルと比較すると、まだまだパッケージビジネスが残っている」と指摘。「これまで数多く支援してきたノウハウを、プログラムとして体系的に一気通貫に提供することで、支援を強化したい」と狙いを語った。

　佐藤本部長は、新プログラムは日本法人独自のものであるとした上で「今後新しくSaaSビジネスに進出したい企業は増えていくとみており、支援策の活用でビジネス拡大につなげてほしい」と述べ「大都市だけでなく、地方にある企業のSaaS事業立ち上げも支援する」との方針を示した。AWSジャパンとしてSaaS市場の活性化を促し、クラウド利用の拡大を目指す考えだ。