富士通と理化学研究所は4月22日、256量子ビットの超伝導量子コンピューターを開発したと発表した。2023年10月に公開した64量子ビット機を拡張したもので、外部ユーザーに提供されている同種機としては世界最大級という。64量子ビット機と同様に、量子シミュレーターを連携して活用できるハイブリッド量子コンピューティングプラットフォーム「Fujitsu Hybrid Quantum Computing Platform」を通じて、25年6月までに企業や研究機関に提供を始める。
開発した256量子ビットの超伝導量子コンピューター
ハイブリッドプラットフォームの計算能力を64量子ビットの4倍に拡大したことで、ユーザーは従来よりも大きな分子の解析や、多くの量子ビットを使用したエラー訂正アルゴリズムの実装と実証実験が可能になる。ユーザーへは共同研究ベースで提供され、共に材料開発や創薬、金融分野などのアプリケーションの開拓に取り組むとしている。量子コンピューターの保有台数が増えたことでハイブリッドプラットフォームの利用可能時間が長くなるため、新規ユーザー獲得の可能性も見込む。
64量子ビット機の拡張にあたっては、熱を効率的に逃すよう設計を行い、増えた配線なども接続方法を工夫。同じ冷凍機内に4倍の実装密度を実現した。
現行の量子コンピューターはノイズの影響を排除しきれず、まだ実用的な問題を解くことは難しいため、エラー訂正技術の開発が必要とされている。富士通の佐藤信太郎・富士通研究所フェロー兼量子研究所長は「今回の256量子ビット機をつくった大きな理由は、エラー訂正実験をしたいため。これまでできなかった実験が可能になり、1000量子ビット機を開発すればより実験規模を大きくできる」と意義を話す。
両者は、26年度中の提供に向けて、1000量子ビット機の構築も進める。将来の量子コンピューターの実用化を目指して、これまで開発で確立した技術などを生かし大規模化に取り組むとしている。
(下澤 悠)