【米ラスベガス発】米Dell Technologies（デル・テクノロジーズ）は、5月19～22日（現地時間）の日程で、グローバル年次イベント「Dell Technologies World 2025」を米ラスベガスで開催している。エンタープライズ向けのAI実装を支援するITインフラ製品・サービス群の「Dell AI Factory」において米NVIDIA（エヌビディア）との協業を強化することや、パフォーマンスと電力効率を最大化した水冷サーバーの新製品などを発表した。

　イベントの初日、マイケル・デル・会長兼CEOは基調講演で、「AIによって企業の進化はかつてないスピードで進む。それを当社がサポートしていく」と述べ、エンタープライズ向けに生成AIやAIエージェントの実装を推進していく考えを示した。


　デル会長は、同社が提供するPC、サーバー、ストレージなど幅広いカテゴリーの製品について、新モデルを紹介した。その中でも、「PowerEdge XE9780L」「PowerEdge XE9785L」は次世代の水冷サーバーで、エヌビディアの最新GPU 8基と高速ネットワーキング機能を統合した「HGX B300」を搭載し、大規模言語モデル（LLM）の学習を従来の4倍の速度で実行できる。
 
　また、独自開発した新しい冷却ラック製品「PowerCool Enclosed Rear Door Heat Exchanger（eRDHx）」は、自己完結型のエアフローシステムにより、IT機器から発生する熱を100％回収するよう設計されているという。エネルギー効率の良い水冷システムを採用したサーバーと冷却ラックの利用で、冷却に要する電力コストを最大60％削減できることから「より密度の高いAI環境にも対応可能になる」とアピールした。
 
　Dell AI Factoryは、企業がAIを適切に活用できるよう支援する同社の戦略で、2024年の年次イベントで発表した。AI対応のハードウェア、ソフトウェア、専門家によるサポートなど、さまざまなサービス、インフラを提供する包括的なAIソリューションで、データの準備からモデルの展開まで、AIのライフサイクル全体を管理する。デル会長は、1年間でグローバルで3000超のAIプロジェクトが生まれたことを報告し、「従来のケースと比較して20～40％の投資収益率（ROI）と生産性向上を実現した」と説明した。顧客のAI実装をさらに推進するため、エヌビディアとの協業を強化し、提供ソリューションを拡張することを発表。AIの導入・展開のすべての段階において、計算性能とデータ処理の高速化、運用の合理化、より迅速な成果の達成を支援する。

　次世代水冷サーバーに加えて、ネットワークスイッチの新製品やソフトウェアのアップデートも実施。AIネットワークのパフォーマンスを高速化する「NVIDIA Spectrum-Xイーサネットネットワーキングプラットフォーム」の一部として、高密度かつ低レイテンシーのスイッチ「PowerSwitch SN5600」を提供。エヌビディアと共同で展開するAIソリューションによって、「エージェントAIの成長を爆発的に支援する」（デル会長）と強調した。
 
　デル会長は、「世界はこれからAIに1兆ドル以上を投資していくことになるだろう。世の中を前進させるOSがAIになる」と言及。AIがよりポテンシャルを発揮するには、より広範囲で採用される必要があると指摘した。多くのパートナーと協力しながらエンタープライズ向けAIを開発し、すべての業界に提供していくことで、「AI Factoryの活用は何百万件に増えるだろう」との見通しを示した。
（堀 茜）