週刊BCNは8月8日、北日本でIT製品・サービスの販売に携わる事業者に向けたセミナー「週刊BCN 全国キャラバン2025 in 札幌」を札幌市内で開催した。ITベンダーは生成AIやDX支援をどのように自社のビジネスの成長につなげていくかについて有識者が講演したほか、ニーズが高まるセキュリティー対策製品を手掛ける2社が自社の商材を紹介した。
札幌駅前で開催した
「週刊BCN 全国キャラバン2025 in 札幌」
基調講演では、IT製品・サービスのマーケティング支援事業を展開するアプライド・マーケティングの大越章司・代表取締役が、「生成AIのビジネス活用と顧客提案のあり方」と題し、システムインテグレーターやIT製品販売会社が生成AIビジネスにどのように取り組むべきかを考察した。大越代表取締役は、生成AIが大きな注目を集め、PoC(概念実証)が多く行われているにもかかわらず、成果につながらずプロジェクトが終息してしまうケースが少なくないことを指摘。その理由を「生成AIはあれば便利だが、なくても今のところ困らない」からだと分析した。また、同じことを尋ねても回答が変化するなど、結果を保証しにくい技術であることも、ユーザー企業に提供する商品として成立させにくい原因になっている。
アプライド・マーケティング
大越章司
代表取締役
生成AIの取り扱いについては、仕様に従って構築したシステムを納入するビジネスから、ベンダーとユーザーが共創型で活用方法を模索するモデルへの転換が必要だとし、当初は小さな領域で成果を積み上げながら、「将来的に非常に大きなビジネスになっていく可能性がある。長期的な投資として取り組んでいく」(大越代表取締役)姿勢が求められると呼びかけた。
続いて、EDR製品「SentinelOne」を取り扱うアクトのITビジネスソリューション本部ソリューション営業部の山内治朗・マネージャーが、SentinelOneとその運用支援サービスを組み合わせたソリューションを紹介した。山内マネージャーは、「中小企業の経営者は『自社が狙われることはない』と考えがちだが、ランサムウェアの被害件数は圧倒的に中小企業が多い」と話し、セキュリティー対策への投資余力が小さい企業が被害に遭っていることを説明した。
アクト
山内治朗
マネージャー
SentinelOneは脅威の検知率が高く、攻撃の阻止までが高速なのが特徴。EDR製品の運用は難しいと考える企業や販売パートナーは多いが、アクトではアラートへの対応を検知から対処、調査まで請け負う「SOCサービス」を合わせて提供しており、セキュリティーの専門人材がいない企業でも導入が可能という。「IT導入補助金2025」が活用できるサービスとして提供しており、「商談開始から半年で数百ライセンスを納入した例もある」(山内マネージャー)と紹介。セキュリティー運用を手軽にアウトソースできるため中小企業にも提案しやすいソリューションだとした。
パスロジの市場戦略部営業セクションの相原彩花氏は、「提案しやすい多要素認証のご紹介!その最新事例と導入戦略」と題して、同社が提供する多要素認証ソリューション「PassLogic」を紹介した。PassLogicは、企業が導入するクラウドサービスの認証を強化できるほか、Webサービスを開発するシステムインテグレーターなどが自社のサービスのセキュリティーを高めるために組み込むことも可能な商品として提供されている。相原氏は調査会社のレポートなどを紹介しながら、「セキュリティーの重点はエンドポイントやネットワークからアイデンティティーアクセス管理に移行している」と述べ、認証を強化するソリューションには今後の需要増が期待できると紹介した。
パスロジ
相原彩花氏
PassLogicは、Webブラウザーだけで利用できる独自の「マトリックス方式」による追加認証を提供するため、スマートフォンやトークンといった認証用の追加デバイスを必要としないのが特徴。官公庁や自治体、教育機関など、デバイス管理に追加の工数をかけられないユーザーにも適しているとした。クラウドサービスを導入する企業にセキュリティー強化の追加オプションとしてセット提案することも可能なので、「クラウドサービスの使用料とPassLogicのライセンスの両方を売り上げとして期待できる」(相原氏)アップセル施策としても有効とアピールした。
特別講演では、経済産業省 北海道経済産業局の地域経済部製造・情報産業課の矢野弘雅・係長が「中小企業におけるDX推進とデジタル人材の育成・確保について」と題し、北海道内企業のDXやデジタル人材育成を後押ししている各種政策を紹介した。経済産業省では、企業がDXの取り組みを自己診断できる「DX推進指標」や、ITスキルを標準化し企業や個人のスキルアップを促進する「マナビDX」などを推進している。
北海道経済産業局
矢野弘雅
係長
道内独自の取り組みとしては、「北海道デジタル⼈材育成推進協議会」を2023年に設置し、現在、大学・専門学校20校、産業界の5団体、北海道、札幌市、文部科学省、経済産業省が参画している。北海道からのデジタル人材の輩出を加速するとともに、道内のデジタル産業を発展させるため、大学等と連携した教育の強化と道内企業の紹介を並行して行っている。ITの仕事というと首都圏のイメージが強いが、学生向けの企業見学会などでは「『IT企業が意外に道内にあることを知った』といった声があり、道内企業への興味関心を高める結果になっている」(矢野係長)といい、道内でITを学んだ学生が地元で就職する流れにつながることへの期待を示した。