情報サービス産業協会(JISA)は、イノベーション経営システム「ISO56000シリーズ」を会員SIerの経営に取り入れ、SIビジネスの価値創造力を高めるよう推奨している。同シリーズは、持続的な価値創造の実現を目的としたもので、失敗を受け入れて新しい価値を生み出す原動力に転換することに重点を置くもの。2019年に規格化され、23年10月にJIS化された。品質管理のISO9000シリーズが製品やサービスの品質保持を目的とし、失敗するリスクを最小限に抑えることに重点を置いていたのに対して、「ISO56000シリーズは失敗を恐れず、試行錯誤を受け入れている点が大きく異なる」(松田信之・参事人材委員会委員長)と指摘する。
松田信之 委員長
ISO56000シリーズで求められる人材は、創造性や実験精神があり、既存の枠組みにとらわれない思考ができることだという。SIerは人月単価を基に開発や運用を請け負ってきた従来のビジネスモデルに加え、「ユーザーの潜在的な課題をユーザーと共に探索し、新しい価値を生み出す仕組みを提案・実装して得られた利益を、ユーザーとシェアするビジネスモデルを構築するのにISO56000シリーズは役立つ」(同)と話す。
AI技術の進展によりプログラムソース生成や、テスト工程の自動化が急速に進むことが見込まれる中、「従来の属人的なプログラム作成や品質改善だけでは、十分な価値を生み出せなくなる」(同)とし、ISO56000シリーズのガイダンスに沿ったJISA主催の経営者セミナーや研修プログラムを通じて、SIerの経営改革や人材育成を支援していく。
(安藤章司)