日本IBMは12月4日、記者説明会を開き、量子コンピューティングの最新の取り組みについて紹介した。IBM Quantum Japan統括部長の堀井洋・シニア・テクニカル・スタッフ・メンバーは、デバイスや素材などに日本の技術が使われているため「(世界で稼働する)IBMの量子コンピューターは日本から生まれたテクノロジーが支えていると言っても過言ではない」と解説。国内は理化学研究所など2カ所で稼働し、日本のチームが韓国やインドへシステムのデプロイメントを担当するなど、同社のアジア地域での展開の拠点になっている。
堀井 洋 統括部長
同社は、実用的な量子コンピューティングを社会に提供するためには、ハード・ソフト両面を含むプラットフォームの整備に加え、活発なエコシステムが必要だと指摘する。多くのパートナーや機関とさまざまな課題に量子コンピューターがどうアプローチできるか研究を進めており、東京大学との協業で運営するハードウェアのテストセンターでは有力企業がデバイスをテスト。量子コンピューターのサプライチェーンへの組み込みを目指している。
11月に発表した量子プロセッサー「IBM Quantum Nighthawk」は、接続性の向上により前世代と比較して30%複雑さの増した量子回路が使えるといった特長を持つ。また、研究用の新プロセッサー「IBM Quantum Loon」は、有効なエラー訂正技術につながる検証を可能にするという。ロードマップでは、2029年までの大規模な誤り耐性量子コンピューター「IBM Quantum Starling」の実現が示されている。
量子ソフトウェア開発キットの「Qiskit」は、27年までに機械学習や最適化といった分野の計算ライブラリーを用いて拡張し、微分方程式など物理・化学分野の基礎的課題をより効果的に解決できるようにする計画だ。
(下澤 悠)