富士通と大阪大学は3月25日、記者説明会を開き、量子コンピューターを用いて化学材料のエネルギー計算を効率化する新技術を発表した。量子コンピューターのエラーの抑制と計算リソースの削減を両立させたことで、複雑な医薬品開発の加速など、さまざまな社会課題の解決への実現性を高めた。
新技術である独自の計算技術「STARアーキテクチャ ver.3」では、精度が高い「論理Tゲート」と、少量の量子ビットで動作する「位相回転ゲート」を組み合わせて高精度と効率性を実現した。量子回路を分子モデルから生成する「分子モデル最適化技術」も開発し、計算時間も短縮した。
二つの技術を組み合わせて、創薬や合成化学といった化学材料分野で注目される分子のエネルギー計算を実施したところ、従来型の計算方式に対して、必要な量子ビット数を最大で80分の1に削減した。計算時間は、これまで数千日を要した計算を、物理エラー率が0.01%の場合は10日前後にまで圧縮できたという。
前世代のSTARアーキテクチャでは固体材料には対応できたが、より市場規模が大きい化学材料への活用は難しかった。新版により、計算時間とリソースを短縮したことで、この分野への適用に糸口をつかんだ。
富士通
佐藤信太郎 所長
今後については、新素材開発、金融といった産業分野での応用を目指す。富士通の佐藤信太郎・富士通研究所フェロー兼量子研究所長は「2030年までに実用的な計算を可能にしたい」と話し、ハードウェアの改良だけではなく、計算方式などのソフトウェアの観点での技術開発を推進する構えだ。
(大畑直悠)