Sansanは3月30日、メディア向けに「中小受託取引適正化法(取適法)」施行後の実態をテーマに勉強会を開催した。専門家による実務対応における課題の解説や、同社が独自に行った調査結果の共有を通じて、制度定着の過渡期における対応の方向性を示した。
取適法は、発注者・受注者の対等な関係に基づいて、事業者間における価格転嫁及び取引の適正化を図るための法律。2025年に下請法などを改正する法律が成立し、26年1月から中小受託取引適正化法との通称になった。
法改正により、適用対象の基準として新たに設けられた従業員要件の当てはめや、価格協議に関する規制強化など、実務的な課題が生じているという。
作業員要件の当てはめについては、物品の製造委託・修理委託・特定運送委託や、情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管や情報処理に限られる場合は、委託事業者は常時使用する従業員数が300人超、受託事業者では300人以下の時に適用される。
情報成果物作成委託・役務提供委託のうち、プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管や情報処理を除いた場合には、委託事業者は常時使用する従業員数が100人超、受託事業者で100人以下の場合に適用となる。
そのため、基準人数を一定程度上回っているかどうか年に一度確認し、十分な余裕があれば当面は再確認を行わないといった運用を行う企業もあるという。
阿部・井窪・片山法律事務所の松田世理奈・弁護士は「社内で運用ルールを確定し、回していかなければいかなければいけない点で、今回の法改正における反響が最も大きかった」と述べた。
松田世理奈
弁護士
同社が全国の会社員を対象に実施した取適法施行後の実態調査では、受注側と発注側の両方の視点から取適法への対応状況や課題を明らかにした。
受注側に対し、「取適法施行後、価格について協議する機会は増えたか」を聞く設問では、法改正後も「価格協議に変化なし」と答えた人が6割弱だった。一方、「増加した」の回答は43.2%であることから、改正を価格転嫁につなげられている層とそれ以外とで、状況に差が出ているとした。
発注側に対し、「自身が勤める会社では、取適法の対応を行っているか」を質問したところ、約9割が取適法への対応を行っていると回答した。新法の施行を契機に、従来の実務の見直しが進んでいるのが分かった。
また、「受託事業者の特定に対応できているか」については、約6割が「課題がある」とした。その理由として最も回答が多かったのが「企業情報の確認、収集」で、従業員数をはじめとした手作業での情報収集が現場の負担になっていることが示された。
大泊杏奈
プロダクトマネジャー
Contract One Unitプロダクトグループの大泊杏奈・プロダクトマネジャーは、「法改正による業務負担を最小限にしつつ、取引慣習をアップデートしていくためには、取引条件の可視化と情報収集の負担軽減が重要なポイントになる」と指摘した。同社は取引管理サービス「Contract One」を通じて、こうした課題を抱える企業に対する支援を行っている。(大向琴音)