PwC Japanグループは5月21日、AIがタスクを動的に組み立て業務を実行するシンギュラリティー時代を見据えた、リスクガバナンスアーキテクチャーの研究開発に関する記者説明会を開いた。研究の一環として、完全自律型のAIエージェントによる企業運営を想定し、同社の東京オフィス内に設置した無人小売り店舗におけるAI自律運営の実証実験の進展を解説した。
同社によれば、将来的にAIが自立稼働するようになれば、エージェントの判断や行動が人による確認・承認プロセスを上回る速度と量で発生する。そのため、AIを業務の担い手とするだけでなく、統制機能にも組み込むことが必要になり、従来のルールベースの統制を見直してリスクベースの視点を取り込んだ新たな統制モデルをつくることが求められているという。
実証実験は、飲料や軽食を取り扱うセルフ決済型の小規模店舗で実施した。AIが販売・在庫状況などをもとに発注や補充を判断し、仕入れ発注や在庫補充など作業用の人員に指示を出す。▽AIエージェントがリスクガバナンス上の要請まで含めて自律的に店舗運営を担えるか確認▽ビジネスリスクを制御してガバナンスを機能させるリスクガバナンスアーキテクチャーの有効性を確認▽人の判断を介した運営とAIによる自律運営を比較し、人が介入すべき領域を明らかにするーの3点を目的に設定した。
PwCコンサルティングの
中島義耀・マネージャー
これまでに仮想環境上でのシミュレーションを終えており、PwCコンサルティングの中島義耀・マネージャーは得られたインサイトを紹介。統制を行うAIがフロンティア系LLMの場合は、経済指標が順調に伸び、かつリスクコントロールも適度だった一方、軽量で安価なLLMを用いた場合は統制が過度になり経済指標も伸びなかった。中島マネージャーは「複雑なデータ環境では、拙速過度な統制は機能せずに経済的損失を招く」と指摘した
今後はシミュレーションで有効性が確認されたシステムを、実際の店舗環境で5月25日以降、イレギュラー対応を含めて検証を行う。実験を通じて得られる知見を基に自律運営を統制する仕組みの構想につなげ、より複雑なユースケースや他の産業の研究へ展開していくとした。(下澤 悠)