日本ヒューレット・パッカード(HPE)は10月6日、複数のAIエージェントが連携して業務を遂行する「エージェンティックエンタープライズ」時代に向けた戦略を発表した。複数のAIが連携してネットワークやサーバーの運用を自律化・最適化するフレームワーク「GreenLake Intelligence」を中心に据え、自律型ITプラットフォームの構築を推進する。執行役員の中村史彦・プリセールス統括本部長は、「エージェンティックAI時代を支えるには、人手を前提とした運用からの転換が必要になる」と強調した。
(南雲亮平)
中村史彦 執行役員
中村執行役員は、これまでの生成AI活用は主にデータセンターでの学習処理が中心だったが、複数のAIエージェントが役割を分担しながら判断や実行を行う仕組みが広がりつつあることを受けて、「今後はさまざまな場所でAIが推論し、処理を実行する分散型のワークロードが主流になる」との見方を示した。
こうした変化に伴い、企業のIT運用には四つの課題が生じるという。第1に、エージェントの動的な連携によって業務フローが複雑化し、人が全体を把握しにくくなる。第2に、推論や再試行の増加に伴うトークンコストの上昇。第3に、推論処理やエージェント間通信の増加によって、GPUだけでなくCPUやネットワーク、ストレージを含むインフラ全体への負荷増大。第4に、権限管理や自動化されたサイバー攻撃への対応など、セキュリティーとガバナンスの確保がより重要になる。
山積する課題に対し、中村執行役員は「人手中心の運用だけでは対応が難しい」と指摘する。そのうえで、今後のIT基盤には▽安全に自律接続する▽効率的に支える▽継続的に適応・改善する─という三つの要件が求められると説明した。HPEはGreenLake Intelligenceを、この要件を満たすアーキテクチャーに位置付ける。
なかでも運用層の中核となるのが、観測、分析、実行、検証を継続的に繰り返す「クローズドループ運用」だ。同社はこれを実現するソフトウェア群として「HPE CloudOps Software」を展開する。同ソリューションは、基盤の構築やオーケストレーションの役割を担う「Morpheus」、可観測性を強化する「OpsRamp」、データ保護や災害復旧の「Zerto」の3製品で構成する。いずれもマルチクラウド、マルチベンダー環境に対応する。
特にOpsRampでは、AIエージェントの利用状況や大規模言語モデル(LLM)の呼び出し回数、トークン消費量、利用コストなどを可視化する機能を備える。エージェンティックAIの普及に伴って重要性が高まるコスト管理や最適化を支援するとともに、AIシステムの可観測性向上にもつなげる狙いだ。