変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札 第二章>富士総合研究所(上)

2002/09/09 20:43

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 富士総合研究所では、長年にわたり地域の情報化提案などを行っていた経緯から、電子政府/電子自治体の研究を続けている。そのなかから、ある実態が浮かび上がってきた。それは、現場の担当者が本質的な意味を理解しないままに電子化を進めていることだ。その実状を、研究開発室情報技術担当・相原慎哉主事研究員、情報通信グループ社会システム研究室・片田保主事研究員の2人に聞いた。

なぜ、電子化するのか

 ――中央官庁と地方自治体の電子政府、電子自治体への取り組みをどう見ているか。

 相原
 かつてのニューメディアと異なり、実用性と利用者にメリットがあるシステムであることを考えれば、電子政府、電子自治体のメリットは大きい。

 ただし、ニーズに向き合って作られたシステムではなく、「上からお達しがあったから導入した」というのでは、導入したもののうまく稼動しなかったなどのトラブルが起こってくるのではないか。

 その原因は、なぜ政府や自治体を電子化する必要があるのか、きちんと意味を理解していないためではないか。

 ――確かに、「自治体の現場ではIT化の意味がほとんど理解されていない」という声がある。

 片田
 行政に携わる側に、「行政経営」という視点をもつ必要がある。

 今、行政の現場で「なぜITを導入してもうまくいかなかったのか」というコンサルティングを行っているが、きちんとした業務の見直しを行うことで、「システムがうまく動かなかった理由がわかった」という声が出てくる。

 例えば電子決済システムを導入して効率をあげようとすれば、現場へ権限を委譲し、決済の仕組みそのものを簡略化する必要がある。

 この点を理解した上で、システムを導入しているかどうかで、その結果は大きく異なってくる。

 相原 汎用的なシステムをつくり、複数の自治体による利用なども進められているが、標準だからと単純に受け入れてしまうと、財政的な破綻を来したり、自分たちの地域にはそぐわずに利用できないものが起こりがち。

 さらに、看護や環境など自治体内部だけではおさまらないテーマが増えている。

 導入するシステムが行政内部だけでなく、将来的には地域全体まで巻き込んでいくことができるものになっているのかどうか、考慮した電子政府、電子自治体となっているのか、きちんと考察する必要があるのではないか。

(三浦優子)
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