中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>15.求められる橋渡し役

2003/04/14 20:43

週刊BCN 2003年04月14日vol.986掲載

 もはや中国は、国内マーケットの延長線上にある――。前号では、猛烈な勢いで中国に進出する日系企業の中で、旺盛なIT需要が生まれており、国内のソフト会社にとって大きなチャンスになっていると述べた。実際、筆者が知る中堅・中小企業は中国に進出する際、情報システム構築で苦労している。金属加工業A社の例などはその典型だろう。(坂口正憲)

 A社は国内で主に家電メーカーと取引。そのメーカーとの間では専用の受発注システムを運用している。ただ、新境地の中国では幅広い業種のメーカーとの取り引きを目指し、現地で汎用システムの新規開発を試みた。

 その際、対中投資コンサルタントから紹介されたのが、社員を100人近く抱える地元のソフト会社B社だった。日本企業向け開発の実績も豊富で、担当マネージャーは日本語も堪能だった。それ以上に、「(B社は)人海戦術が利くので短期間での開発が可能。コストも日本企業に比べ3分の1」というコンサルの後押しが決め手となった。工場稼働まで半年を切り、急いで開発する必要もあったのだ。A社の業務担当者とB社のエンジニアの間でシステム仕様を固め、いよいよ開発がスタート。後は完成を待つばかりかと思われた。ところが、その後はトラブルの連続だった。

 そもそも契約の解釈が違っていた。A社は本番システムの開発を依頼したつもりだったが、B社はデモシステムの開発と受け取っていた。B社は「本番システムの開発ならば、3倍以上の費用が必要」と強硬だった。何とか費用は2倍に収めたものの、仕上がってくるプログラムは、当初の仕様とは懸け離れていた。結局、工場稼働までにシステムは完成せず、急きょ中国企業との協業経験のある日本のソフト会社に仕切り直しを依頼する形となった。A社の失敗は何も珍しいものではない。中国に進出している日系企業ではよくあること。決してB社がいい加減とか、実力不足なのではない。要はコミュニケーション不足なのである。もし、初めから日本のソフト会社が絡んでいれば、A社のプロジェクトは別の展開を見せていたはず。中国に進出する日系企業は橋渡し役を求めている。
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