中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>37.社内ベンチャーが中国目指す

2003/09/29 20:43

週刊BCN 2003年09月29日vol.1008掲載

 NTTデータと言えば、国内最大のシステムインテグレータである。売上高約8000億円を誇り、主要な公共システムの多くにかかわる。そんな同社は、中国でも公共分野に強みを持つ。(坂口正憲)

 1994年以降、本格的に中国ビジネスに取り組み、中国政府に食い込んだ。中国全土の郵便貯金業務システム開発なども手掛ける。さらに96年には、伸びる民間需要と日本向け開発拠点づくりを狙って現地ソフト会社へ資本参加。上海で有名な近代高層ビル「上海金属交易所」のビル管理システムの開発を担うなど、現地需要を開拓している。99年には、念願の独立資本「NTTデータ(中国)」も設立した。こうして見てくると、いかにも大企業らしく資本力を武器に中国市場へ食い込んでいるように見える。ただ、その派手な活動の背後の一方では、社内ベンチャー企業(子会社)も着実に中国市場で健闘している。

 NTTデータの数ある子会社・関連会社の中でもユニークなのがエイジアン・パートナーズとNTTデータイントラマートで、どちらも社内ベンチャー制度から2000年に発足した企業である。エイジアンはERP(基幹業務システム)ソフト、イントラマートはウェブアプリケーション構築を主力とする。そして、このベンチャー2社に共通するのは、アジア市場、特に中国を意識していることだ。エイジアンの場合は、業界に先駆けて発売した本格的な多言語、多通貨対応のERPソフト「A.S.I.A.(エイジア)」が中国に進出する日系企業から高い評価を得ている。累計の販売実績は数百サイトになるという。

 「90年代末、中国の言語と通貨をサポートする機能が充実した会計ソフトがなくて、日系企業の多くが困っていた」(同社)点に目をつけたのである。一方のイントラマートも02年から、ウェブソリューションパッケージ「CoreMount(コアマウント)」の中国語版の販売に乗り出している。現地有力ソフト会社である大連華信などを通じて現地企業への販売を狙っている。NTTデータという巨大な“揺りかご”から誕生したベンチャー2社が、最初から中国市場を目指していたのは、国内ソフト産業の先行きを示しているようだ。
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