企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角

<企業のIT調達モデルを変える デルの挑戦と死角>14.パソコン事業成熟の後に

2004/04/05 20:43

週刊BCN 2004年04月05日vol.1034掲載

 米デルのマイケル・デル会長兼CEO(最高経営責任者)が3月末に来日し、記者会見で「2007年1月期には600億ドル企業を目指す」と語った。04年1月期の売上高が410億ドルなので、今後3年間で1.5倍である。ここに興味深い資料がある。米ビジネスウィーク誌(03年11月3日号)のデル特集に、メリルリンチ証券とデルが作成した売上高見通しが事業別に06年分まで掲載されている。それによると、06年はパソコンが300億ドル、ソフト・周辺機器130億ドル、サーバー・ストレージ100億ドル、サービス90億ドルと見込んでおり、それらの合計が620億ドルとなる。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 注目したいのが、03年以降、デルがパソコン事業の伸びをそれほど期待していないこと。03年に260億ドルの売上高が06年で300億ドルということは、年平均成長率は5%弱。02年から03年にかけての伸び率は13%だが、04年から2ケタ成長はもう期待していないようだ。結局、標準規格に基づくコモディティ(日用品)と化したパソコンは、今後も単価が徐々に下がり、台数に大きな伸びが期待できない。特にデルの売上高全体の約70%を占める米国市場ではその傾向が強まっている。コモディティ化すれば、効率的なデルモデルが強くなるとの見方がある。対大手ベンダーとの競合上はその通りだろう。

 ただし、コモディティ化するということは参入障壁も低くなることを意味し、こまごましたホワイトボックス(WB)業者を一掃するのは難しい。パソコンはコモディティといっても、5万円以上の単価がある。WB業者にとっては魅力ある市場だ。米国パソコン市場でシェアトップのデルは、2位のヒューレット・パッカード(HP)を大きく引き離している。しかしその一方で、WB業者がデルと同じくらいのシェアを持っている。デルはそんなWB業者たちからゲリラ戦を挑まれているのだ。全面的な勝利は難しいだろう。

 米国以外の有力市場を見渡すと、NEC(日本)、Levono(中国)のようなローカル大手がしぶとく、そう簡単にはシェアを明け渡さない。持久戦だ。デルにとってパソコン事業は安定成長が望めればよい領域となった。それでは、パソコン以外の事業は本当に急成長するのか。次号で見てみたい。
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