China 2004→2008

<China 2004→2008>6.電力不足を引き起こすもの

2004/06/14 16:18

週刊BCN 2004年06月14日vol.1043掲載

 今号から本題に入る予定だったが、6月5日付朝日新聞に中国の電力不足を伝える記事が掲載されていたので、少し脱線してそれにまつわることを述べたい。朝日新聞の記事では、中国に進出した日系企業が夏季に予想される深刻な電力不足に備え、自家発電装置の導入を急いでいることなどが紹介されていた。思い出せば昨年夏、上海は連日40度近い日が続き、ニュース番組のトップはいつも「猛暑のすごさ」と「設備増強を急ぐ発電所」という組み合わせだった。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 急激な経済発展に電力供給の増強がまったく追いつかず、中国政府さえも2004年は電力不足がさらに深刻化することを認めている。例えば、上海近く、日系企業が多く進出している江蘇省では04年、524万kWの電力不足が予測されている。江蘇省だけで日本の電力供給量の2%に相当する電力が不足することになる。日本エネルギー経済研究所によれば03年上半期、中国の電力需要は前年同期に比べて15%も増えた。中国では電力需要の約65%を工業が占めており(日本の場合は約25%)、その工業が2ケタ成長を続けている。電力需要が急増するのも当然である。

 そして、人々の生活スタイルもここ数年で大きく変わり、電力需要を押し上げている。5年前、筆者が上海の劉さんに出会ったころ、劉家には冷蔵庫、テレビこそあったが、洗濯物は手洗い、エアコンなどとは無縁だった。それが今では洗濯機が入り、エアコンも各部屋についている。なぜ、人々の生活が急激に電化しているのか。もちろん人々の懐具合が良くなり、家電製品が安くなっているからだ。加えて、中国では「電気はタダのようなもの」という点も影響している。

 筆者が知る限り、中国の人々はほとんどが“正規”の電気料金を支払っていない。各戸にある電気メーターに細工をして、使用量をかなりごまかしている。社会福祉政策の一環なのか、政府も暗に容認しているようだ。それなので、いったん電気製品が家庭に入ると消費電力は急激に増える。何しろタダのような料金なのだから節電意識が働かない。企業でも同じことが行われているとすると…。電力の安定供給はIT産業の発展にも大きくかかわることなので、別稿で改めて述べてみたい。
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