拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第11回 文具・事務機卸のジョインテックス編(1)

2004/06/21 16:18

週刊BCN 2004年06月21日vol.1044掲載

 メインフレームの運用・保守にかかる月額約6400万円のランニングコストを約40%削減して欲しい──。オフィス用品大手のプラスグループで文具や事務機器卸のジョインテックスは、2002年7月、大手ITメーカー2社にこう告げて、「ポストメインフレーム」のIT戦略を練るよう依頼した。ジョインテックスは、文具やパソコン用品、事務機器、衣料、食品などオフィス関連の商品約30万アイテムを、「ITO-YA」を展開する伊東屋など、主に中堅・中小の文具店に卸している。

COBOL資産の移行では満足せず

 だがここ数年、文具などを置く大型ストアよりも豊富な商品を安価で、しかも短納期で中堅・中小文具店に提供する必要性が高まった。ところが、このままメインフレームを使い続けるとコスト増を強いられるのは明らか。商品を低価格で提供するには、システム再構築のIT投資が必要だった。冒頭の2社とは、ジョインテックスの独自基幹ホスト「J-PUMAシステム」をメインフレーム「MP5800」で構築した日立製作所と、ジョインテックスが販売店からの注文をウェブで受け付ける受注システム「Jointex-Web」など、手作りのフロントシステムを担当した日本アイ・ビー・エム(日本IBM)だ。

 このホスト側とフロント側を担っていた2社は、ジョインテックスに対し相互が新システムを提示することになる。この競合は、激しい提案合戦の末、日立製作所が勝利した。この勝負を決めたキーワードは、「変化対応」と「COBOL資産の利活用」だった。日本IBMの提案は、メインフレームのCOBOL資産を引き出し、フロント側とデータ連携させIBMのハイエンドサーバー数台で稼動させるマイグレーション。確かにIT投資は少なく済み、短期間にシステムを構築できる利点があった。

 だが、ジョインテックスは、いずれは品揃えを100万アイテムまで増やす予定で、「徹底したITコストの構造改革」を、システム再構築の命題にしていたため、単純なシステム移行にあまり興味を示さなかった。一方、日立製作所の提示は、「既存システムの蘇生と変化即応型システム」。同社ビジネスソリューション事業部の小川誠・ソリューション技術開発部兼ITコンサルティングセンタ部長代理は、「COBOL資産の有用なものは再利用し、無用な重複データを徹底的にスリム化して、ジョインテックスの新たなビジネスモデルを作った」と、将来を見越したシステムで競合に勝利したと分析する。

 日立製作所が同社のハイエンドサーバー「EP8000」上で稼動するオープンシステムで構築したジョインテックスの新システムは、「Light-Jシステム」と呼ばれ、これまでの基幹ホスト「J-PUMAシステム」に比べ、ランニングコストを当初目標を上回る約50%削減した。基幹を制した日立製作所はその後、ジョインテックス側の業務拡張に合わせ、新システムを次々受注していくことになる。(谷畑良胤)
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