China 2004→2008

<China 2004→2008>9.「中国のシスコ」ファウェイ

2004/07/05 16:18

週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載

 前号では中国IT系企業のナンバーワン企業としてパソコンメーカーのレノボを紹介したが、グローバル市場での実績と注目度から見れば、通信機器メーカーの華為技術(ファウェイ)に並ぶ中国IT系企業はないだろう。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 中国の通信機器メーカーでは、中国普天信息産業が連結売上高8000億円前後(推定)と最大規模を誇るが、同社は国の通信基盤整備に伴って規模を拡大させてきた国営企業である。

 一方のファウェイは、1988年設立の純粋な民間企業だ。自助努力で業績を拡大してきた経緯がある。

 中国情報産業部の発表によれば、ファウェイの03年度売上高は約2800億円と電子情報産業の中で第7位。「ソフトメーカー」として見れば(ソフト製品のライセンス収入やITサービス収入のみを合計)、中国企業トップの売上高である。

 ファウェイは早くからデジタル製品の研究開発に経営資源を集中。ルータ分野では並み居る競合メーカーを抑えて中国市場トップを誇る。

 そのため「中国のシスコシステムズ」と呼ばれ、時代の変化へ機敏に対応できなかった普天信息産業を脅かす存在にまでなっている。

 日本でも通信基盤の技術要素がアナログからデジタルへ移行する際、ルータに特化したシスコを筆頭とする外資系メーカーが市場に食い込み、逆にNTTとの関係が深く、「電電ファミリー」と呼ばれた通信機器メーカー大手が技術転換で後れをとった。同じ構図を思い浮かべればよい。

 ファウェイは社員の過半数が技術者で、売上高に占める研究開発費の割合も中国IT系企業の中ではトップクラス。製品力をメキメキ上げており、欧米、日本のメーカーと比べても実力は見劣りしないといわれる。

 一方、中国で急成長する他の私企業と同じく、どん欲に海外進出を図っている。中近東やアフリカ、南米など中国から遠く離れた発展途上国で積極的に現地法人・駐在所を開いている。欧米、日本企業の営業が手薄な地域でビジネスの勝機を狙っている。実際、03年にはアラブ首長国連邦で第3世代携帯電話インフラ構築の権利を勝ち取っている。

 ファウェイは、中国IT系企業におけるグローバル展開の1つの在り方を実践しているのだ。
  • 1