コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>7.バーチャルシアターの法的問題

2004/12/13 16:18

週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載

 前回、複数のカメラを舞台上に設定して、ユーザーが見たいアングルを選択できるというブロードバンドシアターの試みを紹介した。このようなバーチャルシアターについては以前、ACCSが事務局を担当しているCCD(デジタル時代の著作権協議会)権利問題研究会において、法的問題について検討したことがある。やや専門的になるが、紹介しておこう。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 まず注意しておくべきことは、後にビデオ化、DVD化など2次利用を行う場合の実演家の著作隣接権の処理である。まず、現行の著作権法における映画と放送について、権利処理の仕組みを整理しておく。

 映画の著作物では、出演している俳優(実演家)から最初に録音・録画の許諾を得る必要があり、2次利用には新たに録音・録画の許諾は不要であるとされている。いわゆるワン・チャンス主義である。つまり、1度映画になったものは、実演家の許諾なくビデオ化、DVD化が可能である。

 これに対し、ドラマなどを放送目的で制作する場合は、放送権の許諾があれば録音・録画の許諾は別途必要とされていない(著作権法第93条)。そのため、2次利用に際し初めて、録音・録画の許諾問題が浮上する。過去のドラマでビデオ化されていないものがあるのは、実演家が許諾していないこともあるようだ。

 それではバーチャルシアターではどうか。まず、生中継のようにリアルタイムで配信される場合、配信サーバーへのデータの一時蓄積が複製にあたるかどうかで分かれる。一時蓄積を複製と解釈すれば、配信には録音・録画の許諾が必要になる。2次利用する場合には、これを映画の著作物と解釈すれば新たな許諾は不要であるが、映画ではないとすれば録音・録画の許諾が必要になる。ただ、これらは純粋に法律の問題であって、現実的にはこうした可能性を考慮に入れて契約で処理するべきだろう。

 では、前回触れたスポーツ中継などの場合はどうだろう。まず、演劇とは異なり、スポーツそのものは著作物ではない。ただし、スポーツ番組はたくさんのカメラアングルから選手や全体の動きを捉え、さらにそれらをリプレイなどで編集して視聴者に提供しているので、これらの番組自体は映画の著作物である。

 また、受信したデータを複製頒布したり改変したりすれば、パブリシティ権や肖像権などでも問題になるだろう。新しい技術やサービスにおいて、契約での処理がますます重要になってくると思う。
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