視点

佐賀市の新しい試み

2005/06/06 20:45

週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載

 佐賀市の新基幹システムが4月から無事に本稼動に入った。これは国内の大手ITベンダーにとっては、思わずため息の出るニュースだったに違いない。それは、この住民に関する情報管理をベースにして税、年金、保険などを処理する基幹システムが、従来の大型汎用機(メインフレーム)を用いたシステムではなくオープン系のシステムであると同時に、開発を担当したのが韓国のサムスンSDSだったからである。自治体の基幹システムをオープンシステムで、しかも韓国の企業が開発したのはこれが初めてのことである。

 佐賀市の狙いは、汎用機からオープンシステムへのダウンサイジングによって情報システム経費を削減すること(5年間で3億円の削減効果)、開発したソフトウェアの知的財産権を開発企業と佐賀市の共有とすることによって運用・保守・改修を特定のベンダーに依存しなくて済むようにすること(ソースコードを市が保有しているので、地元IT企業に運用保守を委託することができる)、柔軟で利便性の高いシステムを構築することによって市民サービスを向上させることにあった。

 さらに、この新システムの本稼動と同時に市庁舎内に設置された各種証明書の自動交付機は、従来の自動交付機に比べて価格が4分の1以下だというから驚きである。旧機種の価格は1台が2000万円だったが、新機種は1台480万円、維持費もかつては1台250万円であったものが1台100万円に下がり、増設に要するコストも1台800万円が1台300万円で済むという。

 まず、新しい自動交付機は、市販のパソコンの本体やディスプレイ、プリンタを利用して開発されており、これが大幅なコスト削減を可能とした。また、従来の自動交付機は銀行のATM並みの頑丈さで設計されていたが、新しい自動交付機は街角に設置されている自動販売機並みの頑丈さで十分だという考えで設計されている。自動交付機には証明書の手数料やおつり用の小銭が入っているだけであり、多額の現金もなければ、情報としても個人情報が蓄積されているわけではない。これはきわめて自然な考えである。日本のベンダーから、こうした発想がなぜ出てこないのだろう。

 ともあれ、こうした佐賀市の新しい試みが成功したことは、全国の地方自治体と国内のITベンダーに大きな影響を及ぼすだろう。
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