ユビキタスが日本を変える IT新改革戦略

<ユビキタスが日本を変える IT新改革戦略>10.地域コミュニティづくり

2006/03/06 16:04

週刊BCN 2006年03月06日vol.1128掲載

 総務省は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)や携帯電話などICTツールを活用した地域コミュニティづくりの支援に力を入れている。2005年12月から今年2月には東京都千代田区と新潟県長岡市で、SNSツールを使って地域SNSを運営するICT住民参画実証実験が実施されたほか、三重県でも観光案内サイトにSNS機能を付加して運営する実証実験がスタート。ICTを活用した地域コミュニティづくりが活発化しそうだ。

 電子自治体を推進する目的は、当初から大きく2つあるといわれてきた。ひとつは、申請・届出などの行政手続きをオンライン化して利便性を高めること。もうひとつは、都市化や核家族化の進展で、機能が低下していた自治会・町内会などの地域コミュニティを活性化し、住民の声を行政に反映させることだ。これまでも住民に利用されるホームページづくりに取り組んだり、電子会議室を設置して住民との双方向コミュニケーションを図ったりするなどの施策が実施されてきたが、匿名性の高いネットの世界では電子会議室が荒されたり、規制すると閑古鳥が鳴いたりする問題に悩まされてきた。

 ここにきて、子どもを狙った凶悪な犯罪の発生などで、地域社会で安全・安心に関する情報を共有するニーズが高まっており、大地震などの災害対策としても地域コミュニティの重要性が認識されるようになってきた。総務省では04年5月に政府の経済財政諮問会議で「地域安心安全アクションプラン」を提言し、「地域安心安全情報ネットワーク構築モデル事業」を推進して、04年度に20団体、05年度は29団体が、総務省が開発した地域安全安心情報共有システムを導入した。これに引き続き、05年5月に「ICTを活用した地域社会への住民参画のあり方に関する研究会」(座長・石井威望東京大学名誉教授)を設置、日本でも急速に愛好者が増えているSNSやブログなどのICTツールを使って地域コミュニティづくりを促進するための検討が始まった。

 今回、千代田区と長岡市で行われた実証実験は、総務省が地域SNS構築用に開発したシステムを使ったもので、サイトの運営方法や利用者の使い勝手などを調べた。この成果を踏まえて3月下旬には地域SNS構築のガイドラインを策定することにしており、06年度は10団体にSNSツールを無償配布して地域SNSの構築を拡大していく。

 05年12月には、地域コミュニティづくりにICTツールを積極的に活用していく目的で「地域コミュニティづくりに役立つICTツールに関する研究会」(座長・石井東大名誉教授)も活動を開始。「地方自治体が個別にベンダーに声をかけて新しいICTツールの情報提供を求めづらいという声が多く、研究会で調査したうえで地方自治情報センターのホームページを通じて情報提供することにした」(自治行政局自治政策課)。2月下旬に開催された第3回会合では、アドバンスト・メディアの音声認識ツール「AmiVoice」や、エイベックス研究所の企業スポンサー付き地域SNS「サークルモールシステム」などが紹介され、自治体ビジネスへの足がかりを得た。これらのツールは地域SNSなどを組み合わせながら三重県や千葉県の南房総地域での実証実験を通じて検証していくことにしている。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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