ユーザー事例 経営がITを変える

<ユーザー事例 経営がITを変える>7.エイアンドエフ

2006/05/22 20:29

週刊BCN 2006年05月22日vol.1138掲載

基幹業務システムを統合化

経営判断の精度を高める

 アウトドア用品輸入販売のエイアンドエフ(赤津孝夫社長)は、今年度(2006年6月期)末までに基幹業務の統合を完了させる。これまで販売・会計などの業務や事業セグメントなどによって個別の情報システムを導入するケースが多かったが、大手ERPベンダーの製品に置き換えることで社内システムの統合化を図り、業務効率や経営判断の精度を高める。

 国内外のブランドやオリジナルのアウトドア用品約3万点を取り扱っており、有力専門店や量販店への卸販売や自社直営店での販売、インターネット通販などを主な販売チャネルとしている。00年に導入した内田洋行の業務システム「スーパーカクテル」の販売管理システムを使い、卸と通販の統合的な管理は行ってきたが、主要都市を中心にグループ全体で17店舗展開している直営店まではカバーしきれなかった。会計、輸入などの個別業務も別のシステムを使っていた。

 卸と直営店、通販の3つの事業セグメントを統合的に管理し、なおかつ販売、会計、輸入の基幹業務のシームレスに行うことで業務効率や経営スピードを高めるためには「ワンランク上のERPの導入」(赤津社長)が必要だと判断したのだ。

 海外のアウトドア用品ベンダーからの輸入業務を効率化するため、過去に個別の輸入業務システムを導入したこともあったが、「既存の業務システムとの連携がうまく行かず、埃をかぶってしまった」苦い経験をしている。その後、輸入業務はエクセルで管理し、販売管理はスーパーカクテル、会計財務は別のパッケージとバラバラのシステムで運用したものの限界は見えていた。

 統合化に向けた選定ではERPパッケージベンダー10社ほどから絞り込んだ。最終的に残ったスーパーカクテル、オラクルEBS、オービックセブンのなかで投資対効果の検討を行った結果、オラクルEBSに決めた。使い慣れたスーパーカクテルそのものには何の不満も抱かなかったが、業務の統合化を進めるには統合データベースに強いオラクルの製品が有利だと感じたという。オラクルEBSを販売する伊藤忠テクノサイエンス(CTC)が専門商社向け業種テンプレートを持っていたこともプラスに働いた。

 従来の基幹業務システムに比べてオラクルEBSは高価だ。もともとグローバル展開する大企業向けERPとして開発されたこともあり、中堅の専門商社が導入するのは珍しいケース。CTCの業種テンプレートを活用することでカスタマイズ領域を減らし、大幅なコスト削減を行ったものの、5年前のスーパーカクテル導入時と比べれば数倍の費用となる。それでも導入に踏み切ったのは、アウトドアを軸としつつも、より広範なライフスタイル全般を提案できる企業に成長するためである。

 国内のアウトドア用品市場は年間約1000億円規模で、ここ数年はほぼ横ばいで推移する。主力はアウトドアウェアなどのアパレルで、近年ではその実用性やデザインの改良が評価され、一般のファッション着としても人気が出ている。ファッションの領域へ進出すれば、対象となる市場規模を格段に拡大することが可能だが、流行や季節ごとの品揃えを読み違えればリスクは逆に高まる。歴史ある登山用品のように20-30年、デザインが変わらない一部の定番商品とは性質が異なる市場だ。

 オラクルEBSで統合化し、リアルタイムで経営状況が見られる仕組みを構築することで、より的確に商材を揃え、売れるタイミングで小売店の棚に並べるられるようにする。こうした経営力強化の取り組みを通じて、ライフスタイルの提案力をより強め、競争が激しいファッション領域でシェア拡大に結びつけていく考えだ。(安藤章司●取材/文)
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