SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>23.東京システムハウス(上)

2006/11/06 20:37

週刊BCN 2006年11月06日vol.1161掲載

「直取引」がビジネスの基本

ニッチ市場へパッケージ提供で

 1992年、「バブル崩壊」と同時に東京システムハウスの創業者、橋勝也・現社長は「労働集約型の『下請け』をやめる」と宣言した。これを境に大手SIベンダーや同業他社からの「下請け」を一切禁止。「Market-inするには、顧客企業と直接取引きする」(林知之・取締役システムパッケージ事業部事業部長)ことを掲げ、ニッチ市場に向けたパッケージ開発・販売に事業領域をシフトさせた。

 創業は76年、証券会社出身の橋社長が資本金500万円を出資して設立。当初から、パッケージ導入が中心の米国ビジネスモデルに関心を抱きながらの船出だった。しかし、当時は『バブル経済』華々しき頃。大手SIベンダーの「下請け」として金融機関のデータ入力や受託ソフトウェア開発の仕事がふんだんに舞い込み、「資金を稼ぎ、規模を大きくした」(林取締役)が、「人出し(派遣業務)は、仮の姿だった」という。

 パッケージ事業を軌道に乗せようとした理由は、「高収益体質」を生むためだ。冒頭の宣言をする92年以前にも、ニッチ市場向けにパッケージを出していた。ほとんどは、受託ソフト開発に際して生まれたアイデアを「横展開」した製品。現存するパッケージとしては、30年前に開発した眼鏡店向け経営・顧客管理システム「OMICS」がある。全国2000-3000店の眼鏡店に採用されている「大ヒット商品」だ。同ソフトはカメラメーカー大手のニコンの依頼を受け、既存のノウハウを活用し開発した。

 こうしたニッチ市場向けパッケージは、ゴルフ場向けや食品業界向けトレーサビリティ(追跡履歴)関連の成分情報管理ソフトなど多岐にわたり、現在もそうした“肥沃な土壌”に向けてソフトを生み出す研究を続けている。

 「高収益体質にする」とはいえ、現状はその目標に向け道半ばである。昨年度(05年10月期)の売上高は30億1000万円、経常利益が1億9800万円。同利益率は6.6%強。今年度も増収増益を確保する見込みだが、微増にとどまっている。

 ただ、この業績には、同社の秘めた経営戦略が影響している。10年以上前から、毎年「年間研究投資額」として1億円を計上しているためだ。

 林取締役は「同業他社などに褒められるほど、当社の財務体質は『筋肉質』。その範囲内で先行投資をしている」と、独立系SIerとして自立するために、「少数精鋭の頭脳集団」を目指し、次世代に向けた技術研究に励んでいる。

 売上高に占める「パッケージ事業」の比率は保守を含め約80%。この主力事業の「屋台骨」となり、「直接取引」の原動力になっているのが、COBOL開発環境(コンパイラツール)である「ACUCOBOL(アキュコボル)」の提供。オフコンや汎用機の「レガシーマイグレーション」で、業界から高い評価を得ているのだ。(谷畑良胤●取材/文)
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