大手新聞社が実施した電子申請に関する調査で興味深い結果が出ていた。2008年度に、公的な申請制度において、総申請数に占める電子申請の割合を示す利用率が10%に満たないシステムが3割、利用率1%未満のシステムが2割弱もあるという衝撃的な内容である。

 電子申請が進まないのには、いくつか理由がある。まずは、本人認証の問題である。申請手続きを行う前提となる本人の認証については、登録をし、暗証番号等の手続きをしなければならない。これなら、窓口に申請に行ったほうが早いという気持ちになるため、入り口で挫折してしまうことになる。入り口では挫折しなくても、2回目以降の手続きで、本人認証のためのカードリーダーなどを自費で用意しなければならないという問題もある。年に数回しか使用しないにもかかわらずだ。これでは電子化は進まない。

 私も、社会保険労務士の業務で、電子申請の問題に直面しているが、手続きの性質上、一定の証明書類が必要になるケースが多い。例えば、健康保険の被扶養者の申請には、扶養している状態にあることの証明書類が必要になる。

 それだけではなく、電子申請と同時に証明書類を郵送しなければならないという二重の手間が発生する。証明書類をPDF化し、電子申請と同時に添付するという手段も一部で施されてはいるものの、毎週のように社会保険事務所やハローワークに手続きに行っている社労士事務所であれば、一部の手続きだけ電子申請をする利点はあまり感じられない。

 確かに、電子化すれば手続きがスピーディーになり、人件費の削減が図れるという予測はできる。しかし、現実問題としてこの調査結果を見ると、かえってコストアップになっている事実が浮かび上がっている。

 電子申請が進むには、社会保険制度で雇用保険、健康保険、厚生年金保険などを一元管理する「社会保険番号」が検討されているように、縦割り行政を串刺しにした横断的な考えをもった仕組みが必要不可欠と思われる。

 このことは、会社内部での各種申請手続きも同様である。仕組みが複雑になると、かえってコストアップにつながっていく。来年4月に施行される改正労働基準法における「時間単位の年次有給休暇制度」なども、社員側の利便性は高まるが、管理コストの面も考えて制度構築をしていかなければ、国の電子申請と同様の状態になりかねないと思える。