震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第2回 基幹システム編

2011/06/16 16:04

週刊BCN 2011年06月13日vol.1386掲載

 震災後の電力不安は、多くのDCを運営する情報サービス業界を震撼させた。大型DCは原則として耐震・免震の構造をもち、今回の地震の揺れでの首都圏の主要DCの被害はほぼ皆無。中核的なDCが地震に耐えたことで、日本の情報システムの根幹は守られ、情報システムに起因する社会的混乱は最小限に抑えられたといっても過言ではない。だが、その後の原発事故に伴う首都圏の電力不足と今夏の節電にDCは大きな危機に直面することになる。

DCの弱点が露わに
電力事情の悪化が直撃

 理由はDCの電力削減が不可能に近いことにある。NTTデータ社長の山下徹は「当社グループの国内電力消費の75%前後はDCを中心とする機械棟が占める。ここは削減余地が極めて少ない」と打ち明ける。サーバーの一部を停止したり、DCの空調設定温度を引き上げたり、夏までに移転させたりと打つ手はあるものの、「社会・経済を支える中枢システムは、(十分な検証をせずに)手を加えることそのものがリスクにつながる」(同)と、メリットよりもデメリットのほうが大きいと指摘。移動できるシステムは、ネットワークを経由して西日本などへ移し、その分、首都圏にある機械の稼働率を下げることもできるが、それでも一足飛びに何割も電力消費を削れるものではないと説明する。

 情報サービス産業協会(JISA)などの業界団体を通じた懸命な訴えによって、今夏の前年同期比で15%のピーク時電力消費の削減目標を、DC部門は0-10%へと軽減してもらえることになった。DCを運営するSIerは、ひとまず胸をなで下ろすが、DCが電力事情の悪化に非常に弱い存在であることに変わりはない。DCに備え付けの非常用発電機は、あくまでも非常用発電機であって、その構造上、何日、何週間もの連続運転には耐えられない。仮に発電機を回し続けられたとしても、燃料貯蔵に関わる消防法、排ガスによる大気汚染、騒音規制などのクリアは容易でない。

 野村総合研究所(NRI)社長の嶋本正は、「燃料切れを起こさないために大型タンクローリーを一日何往復もさせる姿は、にわかには想像しがたい」と話す。DCはガソリンスタンドではないと言わんばかりだ。富士通サービスビジネス本部安心安全ビジネス推進室長の太田大州は「恒常的な発電機を備えるのは、もはや純粋なDCというよりは“発電所に付随するDC”ということだ」と定義する。現在のDCのあり方を根底から覆すことになりかねない。次回は、日本のDCは今後どうあるべきかを考える。(文中敬称略)(安藤章司)

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