震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第4回 オフィスと家庭の節電編(上)

2011/06/30 16:04

週刊BCN 2011年06月27日vol.1388掲載

 首都圏に所在する某大手SIerの本社ビルでは、総務課長が節電項目の点検リストを片手に、ビルの実地検分を行っていた。夏本番を目前に控えて、万が一、15%の節電を達成できそうにない事態に陥ったとき、どこから電気を消していくか確認するためである。

迫られる「電力15%削減」
“自衛的省エネ”の動きも

 このビルは、大口需要家に分類される500kWを超える電力を契約しており、節電期間中は電気事業法に基づく強制力を伴う電力利用制限を受ける。前出の課長は「15%減の消費量を超えた段階で、電気が使えなくなる。超過する前に、あらかじめ作成したリストに従って空調や照明、機器の電源を落としていくしかない」と、焦燥感を露わにする。準大手クラスのITベンダーの本社ビルはおおむね大口需要家に分類され、前年同期比で15%のピーク時電力抑制を義務づけられる。決して他人ごとではない。

 長引く様相をみせる電力供給不安を受けて、有力ITベンダーはさまざまな対策商品の開発に力を注ぐ。自らの節電ノウハウを商品化するものだ。オフィス棟だけでなく、工場や小売店舗、家庭にも適用できる商材も増えており、省電力を軸としたビジネスが勢いづく。また、東京電力福島第一原発事故の補償や火力発電に使う燃料費用の増加が、最終的に電気料金に転嫁される可能性もあるため、企業ユーザーを中心に“自衛的な省エネ”に取り組む動きも出始めている。こうしたことから、省エネ関連ビジネスは、「夏を過ぎても、中長期的な需要が見込める」(別のSIer幹部)と予測する。

 オフィス設備とITを組み合わせた商材づくりで強みを発揮する内田洋行は、省エネ支援システム「EnerSense(エネルセンス)」を製品化。無線を駆使することで、既存のレイアウトや配線の引き直しを行わずに導入できる優位性をもたせた。組み込みソフトに強いユビキタスは、超小型の無線LANモジュールを独自に開発し、センシング需要に応える。

 これら省エネの柱となる技術は、温度や照度、人感など各種センサーを駆使したセンシング技術と、センサーから集めた情報を一元的に管理し、事業所内全員で共有して省エネ行動を促進させる仕組みだ。一般的なオフィスの場合、空調と照明、OA機器の三つで電力消費の約88%を占める。オフィスでは、センサーを駆使し、まずはこの三大需要をどう抑え込むかがカギになる。

 次回は、省エネ商材を詳しくレポートする。(安藤章司)

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