震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>第3回 基幹システム編

2011/06/23 16:04

週刊BCN 2011年06月20日vol.1387掲載

 データセンター(DC)が電力事情の悪化にぜい弱なことが明らかになった今、DCを運営する有力SIerは、徐々にではあるが対策を打ち始めている。全国十数か所にDCを展開する日立情報システムズは、震災後の電力不安を受けてネットワーク監視センターを多重化したり、バックアップ体制を充実させるなど、BCP(事業継続プラン)に余念がない。

マイクログリッドに挑戦
コンテナ型DC活用の可能性

 しかし、ユーザー企業のなかには、さまざまな理由で情報システムを手元に置きたいというニーズがあるのも事実。常にコンピュータを駆使する製品開発部門やITベンチャー、庁舎内でのシステム管理を重視する自治体などがそれに該当する。日立情報システムズは、こうしたケースにも対応するために、自前のコンテナ型DCに太陽光パネルや自家発電機を組み合わせた“マイクログリッド型コンテナDC”(図参照)の開発に取り組む。 



 従来の日本のコンテナDCは商用電力とUPS(無停電電源装置)を組み合わせたものが主流だが、日立情報システムズは、電力制御コンテナを経由して太陽光発電パネルや自家発電機、商用電力線など多様な電源で電気を調達する仕組みを想定している。とりわけ、夏の期間、日差しが強くなり、気温が高くなる昼前から夕方にかけて電力消費がピークに達する。今夏の前年同期比15%の節電も、主にこのピーク時電力をどう抑えるかに重点が置かれている。太陽光発電は、実はこの真夏の日差しが強くなる時間帯で、最も多くの電力を生み出せるので、ピーク時カットに直結する利点がある。

 日立情報システムズ専務の森田隆士は、「マイクログリッド型コンテナDCの運用状況を、当社のセンターから24時間体制で監視。遠隔で運用支援するサービスと組み合わせる」と、ユーザーの運用面での負担を大幅に軽減し、同社の付加価値サービスの拡販にもつなげる考えを示す。まだ、実証、計画段階ではあるものの、商用化を実現した後は自治体や工業団地などの需要を見込む。

 コンテナ型DCは、もともと米国で開発されたもので、紛争地域などの悪条件下や、サーバーラックを収容する建屋がないところでもDCを開設できる特色がある。当初、日本では「雨ざらしの更地にコンテナを並べてどうするんだ」(SIer関係者)と用途に疑問の声もあがったが、電力事情が悪化した今、コンテナ型DCの本来的な意味での活用が見直されている。(文中敬称略)(安藤章司)
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