日本IBMの中堅市場戦略

<連載・日本IBMの中堅市場戦略>第1回 組織再編・地域戦略改革

2011/07/21 20:29

週刊BCN 2011年07月18日vol.1391掲載

 日本IBM(橋本孝之社長)は、この10年間、中堅・中小企業(SMB)と地域の両市場に向けたビジネスで、成長はしていても満足な成果を上げきれてない。2009年以前までは数多くの施策を打ち出してきたが、SMBや地域市場は開発途上というのが同社やIBM製品を販売するパートナーの共通認識だろう。こうした状況を抜本的に改革するために動き始めたのが、2010年1月のことである。

地域の重要顧客は販社へつなぐ

伊藤昇 広域事業部長
 その象徴が、旧パートナー事業部と全国のSMBと一部の大手企業を担当する直販営業部隊である旧ゼネラル・ビジネス事業部のうちSMBを担当する部隊を統合して、「パートナー&広域事業部」を発足したことだ。全国の広域事業(SMBを中心とした地域の市場開拓)のビジネスは、「全面的にパートナーとともに推進する」(伊藤昇・広域事業部長)という方針に変更。地域の有力企業・団体に対する営業では、IBM製品を販売する「IBMビジネスパートナー」やIBMビジネスパートナーで組織される「愛徳会」などと、日本IBMの直販営業が案件獲得でバッティングすることもしばしばだった。この同じ製品を売る者同士の“競合”状態の解消を図ったのだ。

 日本IBMは、この組織改編前の2009年当初から、地域の有力パートナーに対して地域パートナーを重視するという方針を伝達して回った。しかし、過去に同社が打ち出した解決策や方針は毎年のように変更され、ここ数年はエリア担当者の異動も多くて窓口が定まらない。「当社の体制に不満が多いことは承知している。しかも、IBM製品のよさがうまく伝わっていない」(伊藤事業部長)。そこで、「パートナーと真の協業を行う」として、SMBと地域市場について地場パートナーに任せ、日本IBMは“黒子”に徹する判断を下した背景には、こうした事情があった。この改革から半年余りが経ち、徐々にその成果が現れている。今年度(2011年12月期)は途中経過ながら、パートナー経由の製品取引が前年同期比で2ケタの成長を遂げた。

 次回以降は、パートナー支援策と業種戦略の面からその秘訣を探る。(谷畑良胤)

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