日本IBM(橋本孝之社長)は、2010年1月に組織を再編するまでは、地域に所在する中堅・中小規模の有力企業に対して、同社の直販部隊が営業をかけていた。「パートナー重視」を掲げる一方で、同社の「ビジネス・パートナー」やビジネス・パートナーが属する「愛徳会」などのパートナーからすれば、売り上げの大きい顧客は、日本IBMが「(直販部隊によって)直接受注する」とみられかねなかった。
「出前セミナー」で販社を支援
パートナー部隊と直販部隊が統合してできた新組織「パートナー&広域事業部」の担当者は当初、パートナーやパートナーの地場顧客を巡回した。その巡回を通じて、「IT要員に乏しい中堅・中小企業(SMB)でも、市場で競争に勝つために大企業並みのITソリューションを求めている」(伊藤昇・広域事業部長)という現実の状況がみえてきた。
伊藤事業部長は、「IBM製品だけで、一気通貫のソリューションはできない」と判断している。パートナーにIBM製品を深く理解してもらったうえで、顧客が求める機能をパートナーがもつ自社製品やその他製品とどう組み合わせれば、顧客の満足を得られるソリューションができるのか。パートナー支援の一環として、こうしたノウハウの植え付けを図ってきた。
新組織発足から1年半以上が経ち、伊藤事業部長の所属部隊では、パートナーにIBM製品のテクノロジーだけでなく、顧客の需要を喚起して要望に応じた提案力を身につける方法を伝えるために、「早わかりセミナー」「深わかりセミナー」と題してトレーニングを実施。全国のパートナーに出向く「出前セミナー」だ。「日本IBMの直販部隊にあるノウハウを伝授する」(同)もので、時にはパートナーが得意とする領域に関するマーケット情報などを提供し、共同で拡販戦略の策定までを手伝う。
日本IBMは、地域開拓の重点業種を定めている。地方自治体、医療、文教、ネット系企業の4分野だ。パートナー連携ではこの分野の伸びが著しく、各分野とも2ケタ以上の売上増で推移しているという。(谷畑良胤)