震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ

<震災後の情報サービス 変容するIT投資のゆくえ>最終回 サービスプラットフォーム編

2011/07/28 16:04

週刊BCN 2011年07月25日vol.1392掲載

 今夏の首都圏の節電は、電気事業法に基づく半ば強制的な節電であり、企業経営や働く人に大きな負担を強いている。そしてまた、節電だけでは経済効率は高まらないので、節電に関するIT投資に消極的なユーザー企業が多いことも分かってきた。そのような状況にあって、生産性を高めながら省エネ性能を発揮する仕組みが求められており、ITベンダーもこうした持続可能な省エネシステムの開発にビジネスチャンスを見出している。

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「節電」だけでは解決しない

 組み込みソフト開発に強いユビキタスは、向こう10年の経営ビジョンのなかで、電力消費や使用状況などをデータベース(DB)化し、新サービスの開発につなげる“サービスプラットフォーム”構想を打ち上げた。すべての機器をインターネットにつなげる「Internet of Things(IoT)」の考え方に基づくもので、Wi-Fi(無線LAN)やZigBeeなどの無線通信を駆使して、家電やセンサー類をインターネットにつなげて、ネット上のDBで動作状況を分析。電力消費の見える化を実現するとともに、機器の保守運用、ホームセキュリティなどのサービスとリンクさせる。ユビキタスは、こうしたサービスプラットフォームを中心とするネットワークサービス事業の売り上げを「今後3年間で倍増近くまで伸ばす」(三原寛司社長)と意欲を示す。

 大手SIerのTISは、Javaベースのサービスプラットフォームである「OSGi(Open Services Gateway initiative)」を駆使するアプローチで、家電やAV、PC、センサー類などの情報を集約化し、新サービスの創出に取り組む。最初は個々の家庭や事業所からスタートし、将来は、「地域や工業団地単位で省エネや、新サービスをつくり出すスマートインフラの役割を担っていく」(林靖彦・OSGi部グループマネジャー)ことを視野に入れる。

 内田洋行も、温度や照度、湿度、人感などのセンサーとDBを活用した自動分析システムを駆使し、「オフィス空間の省エネや生産性向上への取り組みを強化する」(村浩二・次世代ソリューション開発センター長)という方針を示す。

 本来、エネルギー問題は、新エネルギーと省エネルギーの二つの切り口で議論するのが基本とされる。だが、脱石油エネルギーの代表格だった原子力が事故に見舞われて流れが一変した。風力や太陽熱、地熱などを活用する新エネの全貌がまだみえてこないなかで、ITの力で少しでも生産性を高めるための“スマートソリューション”が改めて求められている。(安藤章司)

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